他人と比べて「自分は不幸」という思考は危険だ まずは「本当の気持ち」を知る訓練を始めよう

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仕事をしていて「つらい」と感じたときも、何に対してどうつらく感じたのかを考えることが大切です。例えば、○○さんの一言だった場合に、その一言のどの部分が自分を不快にさせたのか、作業ミスをしたときに、こんなに不快になるのは何に対してなのか、と自分の状況を見つめることを繰り返すことで、自分の気持ちにフォーカスする感覚が養われます。

すると、やみくもに苛立つことや、わけがわからない悲しさを感じにくくなり、何に対して気持ちが動いたのかを自覚できるようになるのです。それによって、すべてではありませんが、リカバリーの方法を見つけられたり、原因自体を取り除いたり、遠ざけることが可能になります。

さらに、確固たる自己が認識できると人に振り回されにくくなります。もちろん人に意見されたり、批判を受けたりすると少なからず気持ちは動きます。しかし、自分の価値観や意思を認識できているときは、振れ幅は小さくて済みます。

反対にそれがないと振れ幅は大きくなり、気持ちのアップダウンが激しくなり、影響を受けやすいのです。基準が自分の中にないせいで、比べるものの基準があいまいでバラバラだからです。そして、相手基準が先になり、それに対して自分は……という思考に陥りやすくなります。

優越感や劣等感で「幸不幸」を決めない

社会性動物である私たちは、誰かの中の1人として存在しているので、どうしても自分と誰かを比べ、そこで優越感や劣等感を覚えます。実は、劣等感自体は、健全なものでもあり「誰かに認められたいために努力する」「自分の目標に向かって頑張る」ことにつながれば成長の糧となります。

しかし、劣等感が単に優劣や勝敗を競う意識に偏ると気持ちが落ち込んだり、うらやましくて卑屈になったりすることが多くなります。

例えば、知人のSNSの内容に嫉妬したり、ネットニュースで悲しい記事を見て自分はここまでひどくないと安堵したり、優越感を覚えたりすることで心の均衡を保つのは、危険です。他人と自分と比べるのは、今日の幸不幸をつねに占いで決めるようなものです。

「あの人がやっているからやらないと出遅れてしまう」「あの人が○○を買ったから、自分は同じものは買えない」……そういった生活は心を疲弊させます。また、相手を否定したり、批判する気持ちの強い人は、自分自身も否定しているということに気づいてください。自分自身を肯定し認められる人は、他人の言動も認めることができるのです。

自分以外のものを基準にして「勝ち負け」という価値観に縛られると、つねに他者との比較から、より優位に立ちたいという気持ちが先行し、感情的になってしまうこともあるでしょう。

誰かに勝ちたいという思いで努力をするのはすばらしいことですが、負けたと感じることで卑屈になると「どうせ自分なんて」という自己否定や、「自分を認めない他人が悪い」という他責に陥りやすくなります。

そのためには、「優劣」「勝敗」から離れることが大切です。

他者との比較で「安心できない」「満たされない」「イライラする」生活をしているのならば、まず、自分の価値観や意思を見直してみることが有効です。自分の意思が自覚できるようになると、基準が自分になり、振り回される感覚が少なくなると思います。自分の思いを大切に自分自身で受け取ることから始めてみましょう。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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