ポルシェ初のEV「タイカン」は、何がすごいのか ワールドプレミアを世界3カ所で同時開催

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もう1つ気になる満充電航続距離はWLTPモードでターボが381~450km、ターボSが388~412kmとされている。車体のホイールベース内フロア下にずらりと並べられたリチウムイオンバッテリーの容量は93.4kWhである。

タイカンではとくに高速走行時の実燃費にフォーカスが当てられていることは間違いなく、実際にアウトバーンでは相当なテストが行われたようだが、それに加えてポルシェ自慢の800V高電圧システムを搭載することにより、現時点で最大270kWの高出力によって5%から80%まで、わずか22.5分で充電することが可能。2時間で350kmを走行でき、充電に30分とすると平均時速は140km/h。十分な速さと言っていい。

興味深いのは「ポルシェ ターボ チャージング プランナー」で、目的地設定の際に充電ポイントも定め、その地点に着くまでにバッテリー温度を最適な状態に近づけることで充電時間を短縮できるという。例えば外気温0℃のときには、これを使うと使わないでは充電時間に1.5倍もの差が生じるそうだ。

これらにより実際の使用条件下では十分なパフォーマンスと使い勝手を実現しているというのがポルシェの主張である。こればかりは実際に試してみなければ断定はできないが、楽しみなことは間違いない。

急速充電器の開発を推進

ただし日本では現状、急速充電としては50kWのCHAdeMOしか選択肢がない。そこでポルシェジャパンはABBと共同で、150kWまで対応する次世代CHAdeMO急速充電器の開発を進めている。タイカンの日本導入時には、ポルシェ販売店のほぼ半数に、そして最終的には全店舗に設置される予定だ。また、都市部を中心に販売店以外のいくつかの場所にも設置していく計画だという。

タイカンはポルシェにとって新しい時代の幕開けとなる(写真:ポルシェ)

タイカンは単なるテスラ対抗馬でもアドバルーンの一環でもない。ポルシェは電動化に対して本気だ。もちろん内燃機関(ICE)の火を絶やすことはしないが、今後のパワートレイン戦略としてはICE、PHEV、EVの3本立てで行くと公言している。

前出のドエルナー氏は言う。「EVはICEやPHEVのモデルとは別の専用プラットフォームで開発していきます。すでに発表しているとおり、次期型マカンはEVになります。911ですか? おそらく911がEVになるのは最後の最後でしょうね。今のところは、そういう計画はありませんが」。

ともあれポルシェにとって新しい時代の幕開けであることは間違いない。その真価については実際にステアリングを握ったのちに改めて報告するつもりだ。

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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