大学生よりも優秀?高専生が注目される理由 技術者や研究者として必要な行動力がある

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設立以来、高専卒業生に対する求人倍率は高い。東京高専の進路状況をみると、2018年度の求人倍率は各学科平均で18.0倍、専攻科の求人倍率は98.4倍だ。

進学先も、多くの国公私立大学工学部などを中心に高専生の編入(専攻科修了生は大学院進学)を積極的に受け入れている。主な編入学先としては、豊橋技術科学大学や長岡技術科学大学のほかにもトップレベルの大学も多い。大学院の進学先では東京工業大学大学院や九州大学大学院などだ(大学・大学院への編入学先リストの一覧)。

前述の東大・松尾教授は自らの研究室に在籍する高専出身者を高く評価しているし、同じく東京大学で31歳という若さで特任准教授となったことで知られる大澤昇平氏は福島高専を卒業し、筑波大学に編入、その後東大大学院に入っている。やはり、AIの研究で注目されている新進の研究者だ。

就職においても、大学の研究面においても高専生の評価が高いのはなぜだろうか。東京高専の新保幸一校長は、「5年間、専攻科を含めると7年間の教育を通じて、専門知識を修得するのみならず、困難な課題に真摯に取り組む姿勢、問題解決へのプロセスを論理的に考える力、課題を的確に解決する実行力など、これからの技術者や研究者として必要な能力と資質を身に付けているから」と話す。

こうした資質を高専卒業生が持っていることは松尾教授も指摘している。新保校長によれば、「真摯な姿勢、論理的な思考力、的確な実行力」が備わっているということだ。

高専では「社会実装教育」が実施されてきた

「頭は良くても行動に結びつかない。言われたことしかしない」。大学生や新社会人がよく受ける評価だが、高専生はそうした点において社会の期待に応えられるような教育を受けているということであろうか。高専では「社会実装教育」が実施されてきた。

「KOSEN発“イノベーティブ・ジャパン”プロジェクト」などだ。東京高専を拠点に21高専が連携し、イノベーションを実現しうる技術者を育成するプロジェクトだ。「社会実装教育」という言葉はなじみが薄いが、以下の達成を目指している。

1.市民や異なる分野の専門家から生まれる「生きている情報」を工学上の言葉や具体的な技術に変換することのできる高度なコミュニケーション力
2.社会の複雑な要求に基づきながら改善や改良に取り組む主体性と創造性

そして、興味深いのは、これらの能力を育成するには、社会の現実の問題に正面から向き合い、他者との対話と工学的な解決策を駆使し、価値を共に創造する経験が必要との考えがあり、以下の4ステップから構成される実践教育をしているという。

ステップ1「課題を把握する」
ステップ2「提供する価値を考案する」
ステップ3「社会に導入する」
ステップ4「評価を得る」

こうした努力が実を結んでいるということであろう。

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