流行の「骨盤矯正」を医師が危ういと感じる根拠 「骨盤の歪み」は整体・カイロでは治せない?

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「医学的には骨盤矯正という用語はない」と指摘する整形外科医の片田重彦氏(写真:大澤誠)

施術の方法にも問題があると語る。記者が、骨盤矯正の施術風景を映したある治療院の広告動画を見せると、片田氏は眉をひそめた。

「腰を圧迫したり、足を急にひっぱったり曲げたりして、治療をしている。これでは効果がない。反射が起きて、動かなくなっている体を勢いよく動かせば、かえって痛みが悪化してしまうおそれがある」

腰痛治療に詳しい別の整形外科医もこう指摘する。「うつ伏せ状態で身体を押している治療院があるが、そのように骨盤を上から圧迫すると、締まりの位置で関節自体が動きにくいため治療効果が乏しいばかりか、場合によっては関節自体が傷つき、症状が悪化することもある。関節運動学を熟知した医師がこういう手技を行う場合には、側臥位(そくがい)といって、横向きに寝かせて関節を緩めた体勢で手わざを施す」。

痛みの原因は骨盤ではなく「仙腸関節」

もっとも、骨盤部分がさまざまな痛みを起こす原因となっていること自体に、否定の声は少ない。むしろ最近では、医学的にもその重要性を示すデータが次々に発表され、注目度が高まっているようだ。

JCHO(地域医療機能推進機構)仙台病院の村上栄一病院長は「これまでは椎間板や付近の神経圧迫が腰痛の主要因とされてきたが、最近では骨盤の関節である仙腸関節(せんちょうかんせつ)に由来しているという見解が医学界でも存在感を増してきている」と説明する。

仙腸関節は骨盤の仙骨と腸骨をつなぐ関節で、わずかに2~3ミリだけ可動する。「体重の約3分の2を占める上半身を支えて、下半身からの衝撃を受けるという、複雑な機能をわずかな可動域で担う重要部位」(村上氏)という。

その仙腸関節が不意に外部から衝撃がかかったり、出産などをきっかけに正常な位置からずれるときがある。それが腰痛を引き起こすという。「ぎっくり腰も産後の腰痛も、仙腸関節のずれ、引っかかりが主な原因だ」と、村上氏は指摘する。

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