安倍首相はトランプに「使われて」いないか

日米貿易協定は「ウィンウィン」という幻想

日本は、交渉中、および協定が履行されている間は、協定の「精神に反する」行動はとらないという言質をとりつけた。これは2018年9月に出された共同声明に記された文言と同じだが、これは232条に基づく訴えへの歯止めにはならなかった。

前述の政府高官は、日本側はこれを「十分な保証」と考えており、安倍首相との2人だけの会談においてトランプ大統領自身が、これは232条に基づく関税が発動されないことを意味する、と明言したと話す。茂木外相も日本の記者団に対し、協定の履行中はこの約束が尊重されるものと理解していると話した。

ニューヨークに拠点を置くコンサルティング会社テネオの日本専門家、トバイアス・ハリス氏も基本的には同じ見方だ。「交渉が始まった1年前の共同声明と同様に、この合意もまた、安倍首相の時間稼ぎ、そして最も有利とは言えない状況をコントロールする動きの1つなのかもしれない」と書いている。

追加関税のリスクは持続する

だが、多くのアメリカ人の通商問題専門家たちはより懐疑的だ。

ブルッキングス研究所のミレーヤ・ソリス氏は、「日本政府がこれをどのようにウィンウィンとして描写するのか想像し難しい」と話す。

「自動車部門は除外されている。また、トランプ大統領は、追加関税という脅威により、日本の農業市場への優先的アクセス条件が脅かされる可能性があると警告されたとは考えていない。これまでの状況から考えると、声明における非常に曖昧な約束に潜在的な問題があることがわかる。自動車関連は今回の協定に含まれないため、トランプ大統領は232条に基づく追加関税を、協定の精神を侵害するものと考えることはないだろう。従って、保証はなく、そのリスクは持続する」

実際、トランプ大統領と政府高官は、この協定について限定的な説明しかしていない。「現時点で、第232条に基づいた措置を、日本の自動車に対して行う意図は、われわれ、つまり大統領にはない」と、アメリカの首席貿易交渉官ロバート・ライトハイザーは発言した。

一方、トランプ大統領は、この誓約や第232条の問題についてはまったく言及しなかった。さらに重要なのは、日本側はトランプ大統領の誠実さを保つために持っていた最も効果的な“武器”をすでに手放してしまっていることである。

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