JR北海道「新たな自殺者」と「アル検拒否」の歴史 国交省鉄道局も「とうてい理解出来ず」と批判

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「通常、乗務員がアル検に引っかかれば、一定期間、乗務から降ろし、その都度、適切な指導を行う。それが3、4回と続くようであれば、(乗務)不適格者と見なし、乗務から完全に外す。私鉄によっては、1回でも(アル検に)引っかかれば、即、乗務から外す会社もあります。よって、5回もアル検に引っかかった運転士を乗務させ続けるなど、JR、私鉄問わず、鉄道の常識では考えられません」(JR関係者)

自殺した運転士が過去に「6回」も、アル検に引っかかっていたというのは事実か、事実であれば、会社としてその都度、どのような指導を行っていたのかなどについて、JR北海道に確認した。が、同社は、「弊社としては、ご遺族の感情を配慮し、回答は差し控えさせていただきます」(広報部)とコメントした。

だが、こうコメントした会社の代わりに、前述の運転士の“指導”に乗り出していた組織があったという。ほかでもない、JR北海道労組だ。今度はJR北海道労組の関係者が語る。

「自殺した運転士は、6回目のアル検に引っかかった8月以降、組合(JR北海道労組札幌地方本部岩見沢運転所分会)から『今度、やったら(アル検にひっかかったら)転勤させるぞ』と迫られていたようです。また、この運転士は独身だったにもかかわらず、何らかの『特別な事情』で、(原則、妻帯者や家族での入居に限られている)社宅に10年近く住み続けていたことから、組合から退去するよう詰め寄られていたそうです」

労政改革いまだならず

この件について、事実関係を確認すべく、JR北海道労組中央本部に取材を申し込んだところ、同組合は次のように回答した。

「組合員の個人のことなので答えられませんし、答えるつもりもありません」

過去に6回もアル検に引っかかり、入居要件を満たさないにもかからわらず、10年近く社宅に住み続けていた運転士に対し、転勤や退去を迫るといった組合の行動は、理屈としては“正しい”のかもしれない。が、それらの行為は、本来なら、組合ではなく、経営側が、自らの人事権、施設管理権に基づいて行うべきものではないのか。

今回の運転士の自殺は、JR北海道の経営権が今日においてもなお、組合に容喙されていることを如実に表している。

西岡 研介 ノンフィクションライター

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にしおか けんすけ / Kensuke Nishioka

1967年、大阪市生まれ。1990年に同志社大学法学部を卒業。1991年に神戸新聞社へ入社。社会部記者として、阪神・淡路大震災、神戸連続児童殺傷事件などを取材。 1998年に『噂の眞相』編集部に移籍。則定衛東京高等検察庁検事長のスキャンダル、森喜朗内閣総理大臣(当時)の買春検挙歴報道などをスクープ。2年連続で編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞を受賞した。その後、『週刊文春』『週刊現代』記者を経て現在はフリーランスの取材記者。『週刊現代』時代の連載に加筆した著書『マングローブ――テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』(講談社)で、2008年、第30回講談社ノンフィクション賞を受賞。ほかの著書に『スキャンダルを追え!――「噂の眞相」トップ屋稼業』(講談社、2001年)、『襲撃――中田カウスの1000日戦争』(朝日新聞出版、2009年)、『ふたつの震災――[1・17]の神戸から[3・11]の東北へ』(松本創との共著、講談社、2012年)、『百田尚樹「殉愛」の真実』(共著、宝島社、2015年)などがある。

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