役所の無責任・非効率に憤る30歳公務員の嘆き 「安月給」「長時間労働」「クレーム」の三重苦

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「行政はとにかく変化を嫌うので、いまだに書面やハンコ文化に依存しています。せめて、役所内の仕事をスムーズにするためにシステムを導入してくれれば、業務量は圧倒的に減るはずなんですが……」

新たなシステムを導入すれば仕事が効率化するかもしれないが、自治体の「収入」が増えるわけではない。そのため、上としては変革に対して後ろ向きで、予算をかけたがらないのが現実だ。

また、短いスパンで突然人事異動が行われるので、システムを理解している担当者がまったく違う場所に異動になれば、引き継ぎができない可能性もある。行政がいつまでも非生産的で古い慣習を若者たちに押し付け続けるのには、こうした事情があるようだ。

なぜ「非生産的な体制」が続く?

公務員・会社員を問わず、当たり前のように受け継がれている業務内容に対して「無駄が多すぎる」と感じている若者は決して少なくないだろう。日本は今、少子高齢化の一途をたどっている。長時間労働が社会問題になる一方で、労働生産性は非常に低く、G7では1970年から現在まで48年連続で最下位を維持しているのだ(公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2018」)。

今回取材を受けてくれた理由について、藤田さんは「これから新卒で入ってくる人には、僕たちと同じような思いをしてほしくないんです」と話してくれた。

組織の体制が変わることに不安を覚える人や、異論を唱える人は多い。「これまで自分たちが組織を作り上げてきた方法は間違っていない」という自負はもちろん、体制を変えたことで起こるかもしれない問題に対して、誰も責任を取りたくないのだ。

しかし、こうした上層部の「見て見ぬふり」は必ず組織の下層部、つまり若者たちにしわ寄せが行く。藤田さんのように、しわ寄せをくらった若者から「効率化」を目指す声が上がり始めるいま、非生産的な体制に依存する組織は、次第に淘汰されていくのではないか。

吉川 ばんび フリージャーナリスト

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よしかわ ばんび / Banbi Yoshikawa

1991年生まれ。コラム・取材記事をメインに執筆。とくに関心のある分野は貧困や機能不全家族、ブラック企業、社会問題など。

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