「エスティマ」「キューブ」生産を終える根本理由 人気の高かった国産車種が次々と消えていく

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アルファード&ヴェルファイアの販売が好調なことも、エスティマを廃止する理由の1つだ。アルファード&ヴェルファイアの売れ筋価格帯は370万~500万円と高いが、両姉妹車の登録台数を合計すると1カ月に1万台近くに達する。ミドルミニバンのセレナ、コンパクトなシエンタに匹敵する売れ行きだ。

ここまでアルファード&ヴェルファイアが売れると、新型エスティマを開発しても売れ行きが心配される。上級ミニバンの需要はアルファード&ヴェルファイアで満たされ、エスティマを売る余地がないかもしれない。あるいはエスティマが売れて、アルファード&ヴェルファイアが下がることも考えられる。そこでエスティマのフルモデルチェンジは見送られ、今では1カ月の登録台数が800台前後まで下がったから、生産を終える。

それでもエスティマには独特の魅力がある。ミニバンは広い車内を得るために箱型のボディーになりやすいが、エスティマは卵型だ。メッキグリルにエアロパーツという画一的な外観に陥らず、美しいスタイルを追求してきた。アルファード&ヴェルファイアに比べると、天井が低めで走行安定性や燃費を向上させやすい。廃止するには惜しいクルマであった。

2000年代に入りセダンの位置づけが変化

マークXはトヨタのLサイズセダンで、マークⅡの後継車種だった。過去を振り返ると、1968年に当時のクラウンとコロナの間に位置する上級車種としてコロナマークⅡが設定されている。フルモデルチェンジを繰り返して9代目に至り、2004年にマークⅡの後継車種として、初代マークXが発売された。

9代目のマークⅡ(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

9代目マークⅡと初代マークXを比べると、後者は全高が25mm下がった。当時は室内空間の拡大期で、フルモデルチェンジのたびに天井も高くしたが、マークXは逆に低く抑えている。運転感覚は足まわりを硬めに設定して、機敏な印象を強めた。従来のマークⅡは実用的なセダンだったが、マークXはスポーティー志向に発展した。

これは2000年代に入り、セダンの位置づけが変化したことの象徴だった。それまでのセダンは、後席を含めて車内の広さがセールスポイントだったが、2000年代には抜本的に車内の広いミニバンが普及して、セダンはファミリーカーの座を奪われた。

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