会わないでいるとますます会いにくくなる理由 統計的に見ればきれいな反比例の法則に従う

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

人と対面したり、1人になったりという変化を大量データから解析した結果によれば、再会の確率は最後に会ってからの時間が経過するに従って低下していくのだ。最後にある人に会ってからの時間をTとすると、再会の確率は1/Tに比例して減少していく。

例えば、あなたがF課長と最後に会ってから、1時間経ったとしよう。このときに再会する確率をPとすると、2時間後にはこの面会確率がP/2、3時間後にはP/3になる。この法則性が、会社幹部でも、新人でも、営業職でも研究者でも成り立つのである。

一言でいうと、最後に会ってからの時間(期間)が長くなると、ますます会いにくくなる(面会確率が下がる)ことが明らかになった。そして、それはきれいな反比例の法則に従うのである。これを「1/Tの法則」と呼ぼう。

幅広い人たちが、まるで見えざる手に従うように、この「1/Tの法則」に従う。統一法則に基づき行動するのである。

面会確率を基準に考えると時間の流れは一様ではない

「さる者は日々にうとし」

親しかった人も、会わなくなると、縁遠くなることを古人はこのように表現した。これは見方を変えれば、去ってしまった人との間では、時間は一様には流れないとも読める。

実は先の結果は、大量の計測データによる分析により、この言葉を定量的な法則として確立したことになる。時間の流れは速くなったり遅くなったりするのだ。

例えば、あなたの仕事には、さまざまな段階でF課長に会って報告したり、承認を求めたりしなければ進められないものがあるとする。この状況では、F課長との面会が、あなたの仕事のうえでの時計の役割を果たすことになる。つまり、あなたとF課長との面会の確率が低くなると、仕事のうえでの時間の進み方が遅くなる(仕事がなかなか進まなくなる)ことになるのだ。

逆に、この仕事のうえでの時間の進み方を基準にして、物理的な時計の進み方を見直してみよう。F課長と最後に会ってから物理的時間が経つと、面会確率が低くなり、仕事時間の進み方が遅くなり、仕事が進まなくなる。

これを、仕事時間を基準にして捉えなおすのだ。仕事の進み具合を基準に物理的時間の進み方を捉えるとすると、時計の進み方は速く見えるはずだ(つまり、仕事は進まないのに物理的時間ばかりが過ぎる)。

1日後より2日後は、2倍も時計の進み方が速く感じられる。4日間もF課長と会わなかったとすると、4倍も時計の進み方が速く感じられるのである。すなわち、時間は一様に流れるのではなく、面会間隔が空くほど、速く進むようになるのである。

人間や社会の科学を定量的に突き詰めていったら、古来知られていた知恵を再発見したことになる。しかし、ただことわざを使うのとは、定量的な科学的データがあることが決定的に異なり、重要だ。「さる者は日々にうとし」といっても、以前は、単に誰かの主観的感想を述べていたのかもしれなかった。したがって「私は、そう思わない」「今は、時代が違う」と言えた。データがあるとこれが変わる。

次ページ1/Tの法則はメール返信などほかの行動にも
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事