「弱腰アメリカ」笑うサウジ攻撃の本当の黒幕 ドローン10機で19カ所攻撃はほぼ不可能

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世界最強の軍事力を誇るアメリカでも、イランとの非対称戦争に本格的に突入すれば、米兵の犠牲は避けられない。2020年11月に大統領選挙を控えたトランプ氏がイランとの軍事対決に踏み込みにくい手詰まり感を見透かし、イランは圧力を徐々に強めている。

9月の国連総会に合わせて、トランプ大統領はイランのロウハニ大統領との会談を模索する中、9月10日、対イラン強硬派のジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を解任したとツイッターで発表した。

今後想定される「攻撃」

緊張緩和の可能性が一転して出てきた中でのサウジへの攻撃は、イランの保守強硬派で精鋭部隊の革命防衛隊が主導しているのは間違いない。革命防衛隊は、イエメンやレバノン、シリア、イラクなどの武装勢力を支援するが、アメリカとの対話が始まれば、こうした活動に焦点が集まることになる。

ただ、今回のサウジ攻撃は「規模や標的の重要性から考えてイラン指導部の許可なしには実行できない」(イラン人ジャーナリスト)との見方がある。イランの現在の戦略は奏功しており、現時点ではアメリカとの対話に乗り出す必要はなく、非対称戦争による脅威を引き続き高めてくる可能性が高いだろう。

実際、イランの最高指導者ハメネイ師は17日、「(アメリカとの交渉に応じれば)要求を押し付けられ、アメリカによる最大限の圧力を成功させてしまう」として、会談を拒否する考えを示している。イランは、アメリカやその同盟国が耐えきれないまでに、非対称戦争による世界経済への影響を拡大させ、アメリカをイラン核合意に引き戻したい考えだ。

今後想定されるのは、サウジ石油施設への継続した攻撃や、 サウジの発電所、淡水化施設など市民生活に直結するインフラを標的にした攻撃だろう。フーシ派を代理人として攻撃を仕掛け、ムハンマド皇太子の強権支配が続くサウジの国民の不満を高め、体制の動揺を誘うことは、原油供給の安定を損なうことにもつながる。

トランプ氏は、大統領選に向け交渉巧者としてイランとの対話を実現し、有権者にアピールしたいのが本音だ。だが、イランの振る舞いによっては軍事行動を取らざるをえない状況に追い込まれかねない。アメリカ側の情報では、イランによる攻撃との見方が強まっており、トランプ大統領は革命防衛隊の基地など、大規模な軍事衝突に発展しない程度のイランへの限定的な攻撃を命じる可能性もある。アメリカとイランの双方が譲歩を狙う危険な駆け引きは、なお続きそうだ。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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