「東京都のブランドロゴ」はなぜ2つもあるのか

ビジネスパーソンにも「デザイン力」が必要だ

リリースで強調すべきだったのは、「都民の皆さまのご意見を参考にした」ことではなく、多大な費用をかけた「東京ブランド」のアイデンティティーとなるデザインを、修正や改善ではなく、なぜ、新たにつくらなければならなかったのか、ではないでしょうか。新しい「Tokyo Tokyo」のサイトにも、そうした記載は見当たりませんでした。

一方、「& TOKYO」と「Tokyo Tokyo」のサイトに共通するナビゲーションがあります。いずれも、ロゴの利用申請にかかわるボタンで、都民や企業が使用を申し込む際のフォームやガイドラインにリンクします。

本来、東京都がこのサイトで都民に伝えたかったことは、無料で使用できる新しい東京ブランドのロゴを、都民の皆さんで有効活用し、東京都のブランド価値を大きく向上させましょう、ということでしょう。こういったアイデンティティーデザインの共有という試みは非常にすばらしいと思うのですが、多くの都民に伝わっているか疑問に思います。サイトのトップを飾るきらびやかな動画に気を取られてわかりにくくなってはいないでしょうか。

つまり、この問題で私が切に思うのは、「コミュニケーションのデザイン」や「情報のデザイン」という発想が欠落しているということです。

ダメデザインがもたらす損失

私はもともと広告会社で大手企業の販促デザインを担当していました。その関係もあり、今でも企業の皆さんから「デザイン」というトピックに関するさまざまな相談事が寄せられます。そのなかでも「プレゼン資料」や「集客・営業用チラシ」の作成にあたり、デザインをなんとかしたい、という内容も多く、改善案を求められます。

一見、東京ブランドのロゴと資料のデザインとではスケール感が異なるように思えますが、問題の本質は同じです。私のもとに送られてくる残念な資料やチラシには、次の5つの共通点があります。

(1) 見えない、読めない
(2) さえない、映えない
(3) 信頼性がもてない
(4) 存在感がない、記憶に残らない
(5) 共有する気にならない

これらの残念な資料・チラシには何が欠けているのでしょうか。それは、デザインによって何をしたいのか、誰に伝えたいのか、未来はどうなりたいのかという「デザインの目的」を明確にして、それを達成するための「戦略」です。

また、「デザイン」というとビジュアル面だけに目が行きがちですが、戦略的に「デザイン」されることで、ビジュアルだけではない、新たな価値の創出に成功したプロジェクトやプロダクトは枚挙にいとまがありません。

私は、デザインとは「プロジェクト成功のカギを握る、創造のための知識・教養」とさえ考えています。「デザイン」はもともとラテン語で「ある方向性を持って計画を進める」という意味を持ち、「設計」とも訳されます。また、それによって「新しい意味を生み出す」というような、哲学的な示唆もその中に含まれています。

ここ最近、歴史や宗教、哲学などをわかりやすく解説した書籍や雑誌、テレビ番組などをはじめとした「教養」ブームですが、「デザイン」もビジネスパーソンに必須な教養と言えるでしょう。

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