人口急減時代の「日本」という国のたたみ方 「47都道府県」のあり方をいま一度考える

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各県の横並び意識による「隣にあるからウチにもつくる」という「フルセット行政」の蔓延が、日本の財政を悪化させています。広域圏に1つあれば十分な空港が各県に1つ2つとつくられ、アメリカのカリフォルニア州1州の面積しかない日本に、ヘリポートを除いても97もの空港ができています。しかも、その9割以上が赤字なのです。

海外交易の拠点として大型船の出入りする基幹港湾も広域圏に1つあれば十分なのに、各県は競うように小舟しか入港できない港を次々とつくってきました。結果、海運の国際競争力は落ち、韓国、香港、シンガポールに交易の主力港を奪われている始末です。

行政圏をリセット

経済活動の範囲が広がり、人々の活動が広域化した今、自県にこもり自県のことだけを考えていても発展はありません。そうではなく、それぞれの県が持つよさを広域圏の中で生かし、潜在的な資源、人材などを互いに出し合ってブレンドし、自由な交流と地域の魅力をアピールして攻勢に出るべき時です。世界がそうであるように、国内も今やボーダーレス社会です。経済圏と行政圏を一致させてこそ力が出ます。

現状の狭域圏でのフルセット行政に思い切った改革のメスを入れ、東京一極集中を緩和して日本全体に活力を生む統治の仕組みに変えなければなりません。

広域化した地域圏に合うよう行政圏をリセットし、各広域圏が主体的に競うような形にすれば、活力が生まれます。自治体の職員らも狭い圏域に閉じこもることなく、もっと能力を発揮できる。古い上着を脱ぎ捨て、新しい上着をまとう。そうした新たな「国のかたち」をつくっていくことが、いま最も重要な政治の仕事ではないでしょうか。

日本は戦後、アメリカのカリフォルニア州ぐらいの面積しかないところに高速道、新幹線、ジェット空港の3大高速網を張り巡らせました。結果、移動の利便性は飛躍的に高まっています。しかし、政治行政の意思決定の仕組みは依然中央集権のままであり、企業本社の多くが東京に集まったままです。この集権構造に高速網を通じたストロー効果も加わり、東京集中はますます進んでしまいました。

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