「DS3クロスバック」は走りも姿形も個性的だ プジョーシトロエンの小型SUVは何が新しい?
エクステアリアの個性については、前述のとおりで、一目で”このクルマ違う”と感じるだろう。独特の輪郭を持つヘッドランプもさることながら、センターピラー(前後ドアのあいだ)のところで、ボディパネルが上に飛び出したスタイルになっている。
この「逆シャークフィン」などと呼ばれるパネルに機能上の働きはないけれど、2ドアのDS3(2009年)で用いられているモチーフを、4ドアのDS3であるこのモデルにも採用したのだろう。その点では、DS3のアイデンティティを明確にするという機能はある。
どこまでも自由にこだわり抜いたデザイン
それ以上にテクノロジーの使い方に個性があり、クルマに乗りこむ前から、一端を味わうことになる。代表的なものが、ドアのアウターハンドルだ。
「プロキシミティキー」と呼ばれるリモコンキーと連動していて、キー保持者がクルマに近づくと格納されているドアを開くためのハンドルバーがポップアップする。
他愛ない技術といえばそれまでだけれど、同乗者はけっこう喜んでくれそうだ。しかもオーナードライバーにとっては、クルマとの距離感が身近になる感覚を与えてくれる。クルマが自分を迎え入れてくれるようなパーソナル感があるせいだ。
乗り込んだら、もうひとつの驚きが待っている。ダッシュボードまわりのデザインに凝りまくっている。ダイヤモンドをモチーフにしているそうで、あらゆるところに菱形のパターンが使われているのだ。
とりわけ目を惹くのは、パネルの素材感を強調したセンターパネルである。筒を割って取り付けたような表面に、「ブロンズファブリック」という金糸が織り込まれてみえる独特の風合いのファブリックが張られている仕様「バスティーユ」など、よくぞここまでデザインにこだわったものだ、と感心してしまう。
スイッチ類の表面処理も菱形のパターンが配されている。暗闇で乗りこむと、センターダッシュボード上に菱形のエンジンスターターボタンが、息づくようにゆっくりと明滅を繰り返しているなど、クルマとひととの距離感を見直そうという、このモデルのコンセプト立案者の発想ににやりとさせられる。