「生活保護でも幸せ」を訴える33歳女性の半生 必要のない洋服や小物をつい買ってしまった

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「週6日、毎日通ってSSTというソーシャルスキルトレーニングやエクセルの勉強をしました。3カ月前に一度企業に就職できたのですけど、上司にイジメられて辞めました。3週間くらいしか続かなくて、そのストレスでまた鬱病の状態が悪くなって希死念慮が再発した。お金もうまく管理できなくて、どうしても余計な買い物をしてしまう。先月はスピリチュアル系の指輪を買ってしまって、まあ5000円くらいですけど。それで月半ばまでお金がもたなかった。それで自殺しようみたいな感じになってしまいました」

生活保護は8万円弱の生活扶助に家賃補助、就労支援センターへの支払いは教育扶助がでている。8万円弱の金額で光熱費、通信費、衣料、食費などを賄わなければならない。最低限度の生活ができる金額であり、無駄使いをしてしまうと、最低限の生活もできなくなる。

生活保護だと1000円、2000円の無駄使いがダメージが大きく、彼女のように命を捨てようとまで発展してしまうこともあるのだ。

最も問題視されたのは「お金使い」

最も問題視されたのは「お金使い」だった。先日、就労支援センターのセンター長、病院に同行した相談員、生活支援センターのソーシャルワーカー、それに西田さんが集まってカンファレンスが行われた。

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「月のお金の用途をすべて書きだして、1つひとつを検証するみたいなことをしました。携帯を格安に変えようとか、コンビニ弁当ではなく自炊とか。モバイルWi-Fiは解約するとか。それと2000円以上の物を買うときは、必ず誰かに報告して許可をもらうとか。いろいろ心配してくれて、助言してもらって、私はまだ生きていていいんだって前向きな気持ちになれました。自己肯定感がでた、というか」

彼女は貧困で苦しむ女性に、諦めないで誰かに頼れば救われることもある、ということを伝えたがっていた。

「就労支援センターの方々に支援をされたことで、お金があろうとなかろうと、生きていればそれでいいのかな。そう思えるようになりました」

洋服の物欲はなくなった。あとは細かい無駄使いをなくすだけ。就職も決まって、もう少しで生活保護から抜けて普通の生活ができる。生きていいと気持ちがポジティブになってから、日々が充実しているようだった。

本連載では貧困や生活苦でお悩みの方からの情報をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
中村 淳彦 ノンフィクションライター

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なかむら あつひこ / Atsuhiko Nakamura

貧困や介護、AV女優や風俗など、社会問題をフィールドワークに取材・執筆を続けるノンフィクションライター。現実を可視化するために、貧困、虐待、精神疾患、借金、自傷、人身売買など、さまざまな過酷な話に、ひたすら耳を傾け続けてつづけている。著書に『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)、『崩壊する介護現場』(ベストセラーズ)、『日本の風俗嬢』(新潮社)、『名前のない女たち』シリーズ(宝島社)など多数。Twitterアカウント「@atu_nakamura」

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