「この資格があれば安泰」と考える人の大間違い ココナラ社長が語る100年時代の「個人の力」

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こういう人が、自分のスキルおよび価値観に従って営業の仕事をチョイスし、経験を積んだらうまくいくだろうが、だからといって営業に縛られなくてもいい。「自分のスキルと価値観を別の形で活かせないかな?」という、新たな選択肢も生まれてくる。

例えば、「このサービスは人の人生をよりよくする」と心の底から思えるベンチャーに出会ったとする。営業職ではないが、やれることはなんでもやろうと飛び込んで仕事をしていたら、持ち前のコミュニケーションスキルを発揮して、人材採用の領域で大活躍といった未来もあるかもしれない。

この場合、経験や過去は「いつか活きる能力」であって、未来を限定するものではない。このように、僕らはこれまでやってきた仕事をリセットし、新しいキャリアを選ぶことができる。逆にいうと、過去にしがみつき、正当化しなければならないのは、自分のスキルがわかっていなかったり、自分の価値観がわかっていなかったりするからだと僕は思う。

「キャリアの長期プラン」をつくってはいけない

時代は変わるし、自分の興味や関心も変わる。長期プランというのは堅実そうだが、不確実な時代に無理やり長期プランを立てると、方向転換のタイミングを逃し、間違ったキャリアプランにいつまでもしがみついたりする羽目になるだろう。

長期プランを立てると「今は準備段階だから、成果を出さなくてもよい」などと、自分のなかに甘えが生まれてしまう。まだ準備ができていないから今は自分に投資するべき、などと言いながら、遅れていく。また、一途というのは、方向転換が効かない不自由な状態でもある。あまりに明確なゴールを設定し、そこに向けて走り始めてしまうと、前提としている社会や自分の興味関心が変わっても、「これを目指す!」と宣言した自分の言葉にウソがつけなくなってしまう。

無意識のうちに、一貫性を維持しようと心の片隅にある違和感を押し殺し、時にはチャンスを逃すことにつながってしまうのだ。この「違和感」こそ、時代への適応だったり自分の成長だったりすることを、忘れずにいたい。

さて、そろそろ話を整理しよう。絶対に変わらない外部要因は「長く働くこと」。そのために必要な「個人の力」が3つあり、1つは「スキル」、もう1は自分の「価値観」だ。「スキル」は唯一無二のものでなく複数あるべきだし、更新されていくほうがいい。長期プランが意味なしになるほど変化の激しい時代だから、「自分の価値観」というブレないものが必要だ。誰も先のことまで見通せない。それは会社も同じで、あなたが80歳まで働けるような目標を設定してくれる企業は存在しないし、そんなリーダーもいないだろう。

スキルを得て成長できるような課題を与えてもらうのを待っていても、誰も与えてくれないし、何も見つからないだろう。目標を自分で設定し、課題も自分で見つける。今後はこれが当たり前になっていくと僕は考えている。これは、自分に責任を持つということであり、簡単なことではないかもしれない。だが、僕はそういう感想を漏らす人に会うと、子どもの頃、父が言っていたことを思い出す。

「先生だろうが親だろうが、気にしなくていい。自分のことは自分で決めていい」――。

数十年経った今も僕のなかに染み込んでいるが、よく似ているのに本質が異なる言葉がある。「自分のことは、自分で決めなさい」だ。「自分のことを自分で決めなさい」と命令されたら、それは他者に動かされた営みとなり、たちまち脅迫的な義務になる。シビアだし、プレッシャーだ。

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