アメリカのバブルが崩壊する瞬間が近づいた? 暴落を警告する「炭鉱のカナリア」が鳴いた
「炭鉱のカナリア」とは、石炭を掘り進める際、目に見えないガスを探知するため、炭鉱でカナリアを持ち込んだことに由来する。
20世紀はアメリカの世紀として、「その100年でアメリカを象徴した会社を1社挙げよ」と言われれば、普通の人はGE(ジェネラル・エレクトリック)を挙げるだろう。GEはトーマス・エジソンに由来する。そしてそのエジソンのパトロンだったJPモルガン本人にとっても、同社は帝国の要の一つであり、それはロックフェラーの時代になっても変わらなかった。
そして1980年代にはジャック・ウエルチ会長の元で大改革に成功。その後もアメリカを代表する会社であり続けた。しかしそのGEも、ちょうど中国の台頭と前後するように衰退。そして昨年6月、ついにNYダウ工業平均の開設以来、110年間守り続けたダウ採用銘柄を外れた。
GEに降ってわいた「不正会計疑惑」をどう見るか
そのGEが、偶然ではあるが8月15日、あのバーニー・マドフ元ナスダック会長の不正を暴いたハリー・マルコポロス氏によって、約4兆円の不正会計をしていると糾弾されたのだ。この額は、破たんしたエンロンを超える規模だ。
この問題に結論が出るのは相当時間がかかるだろう。マドフ事件でも、当初マルコポロス氏の主張は全く相手にされなかった。それはそうだ。当時のマドフ氏はナスダックの会長をつとめた業界の重鎮。どちらを信用するかは明白だった。
今回、GE側は、マルコポロス氏の糾弾を「ヘッジファンドから報酬をもらった人間の戯言」と否定している。同時にGEのラリー・カルプ会長は市場で自らの資金を投じて自己株買いを断行、健全性をアピールした。だが、マルコポロス氏はヘッジファンドとの関係も隠さず認めているのだから、本人は余程の証拠を握っているつもりなのだろう。後は司直がどうでるか。
筆者は、これまで「次にバブルが崩壊する場合、リーマンショック型ではなく、ITバブル崩壊型になる」と主張してきた。今の債券バブルをみると、この考えも自信が揺らいでいるが、その場合重要なファクターになるのが企業会計などの信憑性 への疑惑だ。
2001年の株の暴落は、ITバブルが弾けたことで始まったが、途中からはバブルの間は隠れていた不正会計(エンロンやワールドコム)、ウォール街のモラルの低下などが、株が下落したことで事後的に表面化した。
その結果、当時のウォール街の大御所だったシティグループのサンディ・ワイル会長、AIGのモーリス・グリーンバーク会長、メリルリンチのデービッド・コマンスキー会長が次々に辞任に追い込まれた。社内で圧倒的な権力を誇った中興の祖が、後任を決めないまま突然いなくなるとその会社はどうなるか。3社では後継者問題が難航、そして、サブプライムローン債権やCDSを大量に抱え、リーマンショックでは中心的な存在になった。
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