アメリカのバブルが崩壊する瞬間が近づいた? 暴落を警告する「炭鉱のカナリア」が鳴いた
ところがアメリカの月曜日は、蓋を開けてみると逆のことが起こった。「ゴールドとの鎖が切れ、これからどんどんドルが刷れる。だったら株は買いじゃないか」と、市場は一転して強気に変貌していた。ダリオ氏はこれを見て相場の本質を学んだと後に回顧している。
なぜ1971年以降もドルの基軸は維持されたのか?
一方、この時テキサスで医者をしていた元下院議員で大統領候補だったロン・ポール氏は、ニクソン大統領の発言に「アメリカは敗北した」とショックを受けた。彼は直ぐ医者を辞め、アメリカの危機を救うべく国会を目指した。そして通算では下院議員を10期務め、さらに大統領選に3度挑戦。共和党でありながらイラク戦争には堂々と反対票を入れ、その後も歯に衣着せぬ政治家としてリバタリアン(自由至上主義者)の第1人者の地位を築いた。
結果からみれば、正しかったのはレイ・ダリオ氏だ。アメリカはロナルド・レーガン大統領の時代にソ連を倒し、念願の単独覇権を確立した。一方、リバタリアンとしての議会のティーパーティ勢力は、オバマ政権下の2010年の議会選挙で大躍進したものの、ドナルド・トランプ大統領の登場で今はその存在が消えかかっている。
ただし、ニクソンショック後にドルの基軸が維持されたのは、アメリカが何もしなくても維持されたものではない。ニクソン政権は、ドルの覇権を維持すべく、第1次オイルショック後に「ペトロダラーシステム」を構築。この時、サウジアラビアに有無を言わせないため、軍事介入も辞さないと脅した(サウジ内の油田をアメリカが支配)。さらに民間ビジネスでは、ちょうどこの頃デービット・ロックフェラー氏が3極委員会を設立、アメリカの覇権堅持に重要な役割を果たした。
こうして金本位制度から離脱したアメリカだが、同国にとってドルの基軸を維持するには、市場力学では最強の通貨である必要はなく、最も弱くない通貨でさえあればよかった。そのボトムラインは、財務省も中央銀行のFEDも共有していた。そして状況に応じて、自分に都合のよいドルの水準を、力ずくで相手に押し付ける政策を続けきた。
それからほぼ半世紀。今年の8月15日、筆者はアメリカ市場を取り巻く精神性の劣化に驚いた。自分が歳をとったせいもあるが、この程度の株の下げで、FEDは緊急会議を開き、緊急利下げを検討するかもしれないとの噂が立った。たとえ噂にしても、これがあの戦争で日本を完膚なきまでに叩きのめしたアメリカだろうか。
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