韓国「不買運動」の原因は反日感情だけではない 国交正常化以降、続く対日貿易赤字に危機感

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1965年以降、対日貿易で韓国が黒字になったことは一度もない。今年上半期も、100.5億ドル以上の貿易赤字となった。

2018年に赤字となった主要品目を見ると、「原子炉・ボイラー・機械類」(▲85.7億ドル)、「電気機器・録音機・再生機」(▲43.3億ドル)、「光学機器・精密機器」(▲35.7億ドル)となっている。

このほか輸入額が多い品目としては、半導体製造装置の52.4億ドル、中央演算処理装置(CPU)とメモリーなど集積回路19.2億ドル、精密化学原料19億ドル、プラスティックフィルムとシート16.34億ドルなどがある。それぞれ韓国の製造業で大きなシェアを占める半導体とディスプレイ製造に核心的な部品と素材だ。

今回、日本政府が輸出制限を発表した3つの品目も、これに該当する。赤字総額240.8億ドルのうち、150億ドル以上が部品・素材から発生したものと把握されている。

2000年代以降、対日赤字が急増した理由

共通しているのは、これらの部品・素材は不買運動を繰り広げる一般消費者にとってなじみの深い「消費財」ではなく、企業向けの「産業財」であるということだ。この機会に韓国製造業が持つ現在の体質を強く改善しない限り、産業財に対する高い依存度と対日貿易赤字を解消することは簡単ではない。

1965年から1980年代までは対日貿易で赤字を出しながらも、その規模は深刻なものではなかった。ところが、2000年代以降、その規模が急増した。その理由は何か。専門家らは、この頃から韓国の対日輸出の規模が減少した背景に注目する。

韓国の中央銀行である韓国銀行の金融通貨委員だったチョン・スンウォン氏は「昨年の韓国の輸出全体において、日本が占めるシェアは5.3%へ急減した」と言う。2000年のシェアは11.9%で、30年前は20%程度だった。G2(主要2カ国)として浮上した中国が急速に経済成長したうえ、貿易相手国の数が増加したことで、貿易全体に占める日本の存在が相対的に低下したこともある。

輸入に占める日本の割合も、2000年の19.8%から2018年は11.5%へ縮小した。ただ、日本市場で韓国製品がこれまでのように売れなくなったことも指摘されている。とくに中国が低賃金の労働市場で確保した価格競争力や短期間で積み上げた技術力を蓄え、製造業の分野で韓国のライバルとして急浮上した。その結果、中国産製品が世界市場で韓国産に置き換わるケースが2000年代以降急増した。

日本でも2010年以降、状況はさらに悪化した。POSCO経営研究院のチャン・ユンジョン所長は「2010年代以降、半導体を除く製造業すべての業種が、生産と輸出において2000年代よりも厳しい状況に直面した。この10年間、韓国製造業の生産額のうち、輸出が占める比率が10.5%から2.8%へ、付加価値創出額の比率も9.2%から4.5%へと減少した」と指摘する。2012~2018年、韓国の製造業の生産額の増加率は年平均2.9%、同期間の国内総生産(GDP)成長率は3.0%にも届かなかった。

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