"ドル箱"インド市場でスズキが新たな一手 単独で工場新設に500億円

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その理由は「マルチには販売拠点への投資に集中してもらうため。生産にかかる投資負担は本体が負う」(スズキ広報)という。

インドで圧倒的な存在感を誇るマルチだが、今後も盤石とは言い切れない。最大のライバルである韓国・現代自動車が勢力を拡大しているのだ。

現代自のシェアは15%弱とマルチ・スズキの半分にも満たないものの、13年9月に投入した新型ハッチバック車「グランドi10」が3カ月で3万5000台を受注する大ヒットを記録。インドのカー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。現代自だけでなく、欧米の競合も最新技術を搭載した新車を次々と投入し、競争が激しくなっている。

スズキの課題となっているのが、販売網の拡大やアフターサービスなどサポート体制の強化だ。地方都市への直営販売店の出店のほか、修理や納車までの期間を短くするために完成車や部品をストックする拠点を地域ごとに整備していく必要がある。

2012年の暴動は「関係ない」

マルチの前2013年3月期の当期純利益は380億円。500億円の設備投資と、販売網の拡大にかかる資金的、人的コストを単独で捻出するのは負担が大きい。

加えて、「現地では(金利)コストが8%と高い」(スズキの杉本豊和専務)。グループ内の資金を有効活用するという点でも、スズキ本体から資金を出すのが望ましいという結論に至ったという。

マルチでは2012年7月、マネサール工場で暴動が発生。人事担当のインド人管理職1人が死亡し、約100人の負傷者が出る惨事となり、一時操業停止に追い込まれた。

スズキがSMGを通じて工場を建設するのは、もともと2012年6月に、マルチが増産投資を行うべく、グジャラート州と新工場用地購入で基本合意していた場所。スズキ本体が工場運営に直接関与し、人の管理をしやすくために単独投資にした、と見る向きもある。これに対し、スズキの長尾正彦常務役員は「マネサールの暴動とは一切関係ない」と否定する。

今回建設する新工場はマルチからの生産受託という形態をとる。インドでは今後もマルチが中核を担うことに変わりはないが、スズキも親会社としてサポートし、事業基盤の拡大を図る方針だ。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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