停電で「電車内閉じ込め」、盲点だった猛暑対策 京成線ストップ、冷房切れ乗客が体調不良
この地震ではJR西日本が運行する列車153本が駅間停車し、約14万人に影響を与えた。停車から30分後に降車を開始したものの、特急列車1本を残して停車した全列車の避難を完了するまでに約4時間を要している。
この駅間停車がいかに過酷であったか、同社がまとめた報告からうかがい知ることができる。トイレがない車両は、降車や最寄り駅まで誘導したほか、近接して停車するトイレのある車両へも誘導したが、それにも限界がある。「乗務員室を遮蔽し、手元にある材料で簡易トイレを作成」した。
誘導にも課題があった。線路を歩くことが困難な、杖や車いすを使う乗客には「担架を準備して、係員4、5人で対応」。一方で運行再開を待つ乗客に対しても食料を配布しながらの対応だった。
国交省鉄道局はこの教訓を生かして駅間停止時のガイドラインを策定。救出はしごの列車への搭載や非常用電源の設置、運転再開に向けた効率的な点検のために地震計を増やすなどの提案を行った。
ただ、この地震発生時の大阪市の最高気温は18度。猛暑に適応した対策は、いわば「想定外」だった。
猛暑対策は盲点だった
猛暑と真逆の事例は、実はあった。2018年1月11日、新潟県三条市のJR信越線東光寺―帯織駅間の踏切で、新潟発長岡行きの普通電車が豪雪によって運行不能に陥り、430人が約15時間にわたって車内に閉じ込められた。このときも一部の乗客が体調不良で救急搬送されている。列車は暖房も機能しており、トイレも付いていたが、開放までの時間が長過ぎた。
このとき、国交省鉄道局は再発防止策として「運行再開と乗客救出の対応を並行して行うことを徹底する」ことなどを指示したが、これまで猛暑時の駅間停止対策が真剣に検討されたとは言いがたい。
そこで冒頭の猛暑対策の意見交換会だ。予定の時間を過ぎても熱心に話し合いが続いた。会議は非公開だが、ホームページ上で結果のとりまとめを公表する予定だ。国交省鉄道局は「各社、ハードソフト両面からオリジナリティーに富んだ対応を考えている。対策事例集をまとめて活用を呼び掛けたい」(安全監理官室)と会議の方向性を示す。期せずして車内で足止めされた乗客を、できるだけ早期に開放する一助になれば、それに越したことはない。
ただ、昨年から発生した駅間停車の対応を追う限り、鉄道局が閉じ込められた乗客の救出を第一に考えるべきだと明言した文書は残っていない。トラブル対応にあたる安全監理官室は「乗客ファーストであることは当然で、それを前提に対策は考えられている」と話すが、わかりきったことでも明示することは大切ではないか。乗客の安心と鉄道事業者への信頼は、それでこそ育まれるはずだ。
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