ボルボの走行性能上げる「ソフトウェア」の正体 有効なマンネリ防止策で、セールスの武器に

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ひと昔前の乗用車は、1車種のなかに排気量や機構の異なる数種類のエンジンを設定することでいくつかのグレードを展開していたが、ターボエンジン全盛の近頃は同一排気量のエンジンのターボ過給圧などを変えることで動力性能に差をつけて複数のグレードを展開する傾向にある。

ポールスター・パフォーマンス・ソフトウェアは、ユーザーがあとから自分のクルマのエンジンの(ターボ過給圧を変えることによって)性能を上げることができるという意味で、購入後に1つ上のグレードに変更することができるとも言える。

“3年目の浮気”を封じるボルボの取り組み

ポールスター・パフォーマンス・ソフトウェアは販売店が利益を上げるのに有効なツールになっているようだ。販売店はクルマ自体を販売するだけでは十分な利益を上げられない。車検、整備、修理のほか、カーナビをはじめ各種オプション品の販売が利益を確保するうえで重要となる。

その点、単価の高いこのソフトウェアはセールス担当者の腕の見せどころだ。定期点検のために入庫したユーザーに「お待ちの間、乗ってきてください」と試乗を勧めたり、修理、車検時の代車として渡したりすることで体験してもらうのだそうだ。

あえて新車購入時には積極的に勧めず「しばらくしてから試乗してみてはいかがですか?」と説明するにとどめ、しばらくたってからその存在を知らせることで、購入後、希薄になりがちなユーザーとのコミュニケーションの機会を増やすのに用いる “できる”セールス担当者もいるという。その結果、ソフトウェアが売れるもよし、インストールされた別のモデルを気に入ってもらうもよしという算段だ。

ポールスター・パフォーマンス・ソフトウェアはユーザーが“3年目の浮気”を自分で封じるボルボならではの有効なマンネリ防止策と言え、売る側にとっては、よそにないユニークな商品で、かつ利益率も高く、さらに次のセールスへのきっかけとして使える重要な武器なのだ。

ボルボ・カー・ジャパンの販売好調は2019年も続いている。上半期(1~6月)の登録台数は、外国メーカーの乗用車全体が14万8556台(前年同期比1.8%減)のなかで9275台と前年同期比で9.1%も増加した(自販連データ)。同社は昨年3月発売のXC40や同9月にモデルチェンジしたV60の堅調な売れ行きのためと分析しているが、堅調な売れ行きの理由は、クルマそのもの以外の部分にもあるのではないだろうか。

塩見 智 ライター、エディター

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しおみ さとし / Satoshi Shiomi

1972年岡山県生まれ。関西学院大学卒業後、山陽新聞社、『ベストカー』編集部、『NAVI』編集部を経て、フリーランスのエディター/ライターへ。専門的で堅苦しく難しいテーマをできるだけ平易に面白く表現することを信条とする。自動車専門誌、ライフスタイル誌、ウェブサイトなど、さまざまなメディアへ寄稿中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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