男性が不慮の死「外国人収容所」悪化する惨状 今もハンガーストライキが行われている

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集団ハンガーストライキによる日本の入管の“軟化”はごくわずかな間にすぎなかった。サニーの死の直後、4人のイラン人のストライキ参加者(うち1人は25キロやせた)が突如解放されたが、そのうち2人はそこからわずか2週間後に牛久入菅に再び収容された。

2人は再び食事を拒否している。法務省はこの状況を認識している。「ハンガーストライキは被収容者の選択です。不法状態なのですから収容する必要があります。健康状態が悪化した際には解放して、回復し次第、再収容しています」とある法務省関係者は明かす。

牛久を訪れた山下法務相

山下貴司法務相はサニーの死による国際的な影響を認識しているかもしれない。日本は8月28日から参加者4500人のアフリカ開発会議に関する国際会議を開く。ナイジェリアは将来のアフリカにとって最も重要な国の1つだ。開催国である日本が公共施設内でのハンガーストライキでナイジェリア市民を死に至らしめるのは賢明とは思われない。

アメリカの名門大コロンビア大学ロースクール卒業の山下法相は、被収容者がシャワー室で自殺を図った2018年10月に牛久入管を訪問している。「記憶の限りでは法務大臣の立場にある人が牛久を訪問したのは初めてでした」と、あるNGOのメンバーは語る。

牛久入管はハンガーストライキをしている人々をあるブロックから別のブロックへと移動させることで隔離しようとしている。「収容所では車いすが足りなくなっている」と、イラン人のベーザド・アブドラニは語る。彼はハンガーストライキに参加していたが、再び食べることに同意した後に、牛久入管収容所からの解放手続きに入っている。しかし、解放されてもいつまた収容されるかわからない。

「自分がなぜ収容されたり解放されたりするのかわからない状態で、どうやって生きていけるでしょう?」とアブドラニは話す。

7月12日に安倍晋三首相は、元ハンセン病患者の家族に対する賠償として総額3億7675万円を支払うよう国に対して命じる熊本地方裁判所の判決について、控訴しないことを決定した。7月24日には家族たちも被った社会的偏見と差別について政府を代表して深い謝罪の意を表明している。この決定は法務省の希望に反してなされたものとされている。

日本の人口減の問題や、外国人の基本的人権を真剣に考えるのであれば、安倍首相は不法滞在者たちに対しても正しい判断を下すことができるはずだ。

レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

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Régis Arnaud

ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。近著に『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』(2020年)がある。

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