今、埼京線の車窓を見下ろすと、市内の街並みには、倉庫よりも大規模マンションが目立つ。その思惑どおりに戸田は発展を続けているということなのだろう。
この戸田市の注目すべきデータは、市民の平均年齢が40.8歳と埼玉県内一若いこと。そして地方自治体の財政力を示す財政力指数はやはり県内一、全国でも12位であることだ。しかしその割に、埼玉県内での戸田市の存在感が希薄なのはどうしたことだろう。
荒川と平行する戸田公園は戸田市を象徴する憩いの場。各大学や企業のボート部の艇庫の並ぶ漕艇場もあり、荒川の河川敷をランニングやサイクリングする人も多く見かける。この近くの戸田橋付近を会場として毎夏行われる花火大会は周辺地域の人気イベントだ。
タワマンは?
そんなイメージのよい戸田公園駅周辺だが、ここは荒川が近いため、古くからたびたび水害に見舞われてきた地域だった。豪雨や台風で川が増水すると町中が水びたしになるので、埼京線開通以前の頃まで避難用のボートを自宅に常備していた家も多かったという。
荒川の河川敷に立って下流側を眺めるとタワーマンションが林立する川口の街が見えるが、なぜか戸田市内にはタワーマンション街は見当たらず、北戸田駅の駅前に1棟あるだけだ。戸田市内の人気マンションというと、戸田公園最寄りの15階建て前後の大手デベロッパーによる大型マンションが多い。
20年ほど前、初めて戸田公園駅で埼京線を降りたとき、まだ駅前の街並みは荒涼とした感じで、競艇場行きの無料送迎バスに乗り込む人たちの殺伐とした雰囲気に怖気付いた記憶がある。今、その駅前東口は公園のように整備され、駅高架下の商業施設にはスターバックスコーヒーや無印良品の店舗もあり、随分と町の雰囲気は変わった。
鉄道駅ができて約35年という戸田はまだ街の熟成中という感はあるが、だからこそ、今後20年、30年経ったときのさらなる変化が期待できるのかもしれない。東京都内へのアクセスのよい鉄道駅ができることが街にどんな変化を与えるのか。戸田市はそんなケーススタディの場としても興味深い。
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