海外の長期投資家が日本株を全く買わない理由 これから本格化する企業決算には注意が必要

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その企業収益の土台となる経済動向をみても、国内では、たとえば消費者態度指数で消費者心理を測ると、大きな心理悪化要因が見出しづらいにもかかわらず、指数の低下が進んでいる。過去の同指数の悪化局面をみると、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、2014年の消費増税と、明確な指数押し下げ要因が存在した。これに対し、現状はこれといった悪材料がみられないなか、消費者の気分が悪くなり続けていることは、かなり不気味だ。

消費者は価格が上昇した製品やサービスの消費を控える傾向を強めているが、そうしたなかで10月に消費税が引き上げられる。その結果、個人消費がどうなるかは、火を見るより明らかだろう。今後の内需・非製造業に対する大打撃が懸念される。

一方で輸出も不振だ。先週18日(木)に発表された6月の貿易統計をみると、前年比ベースで輸出金額は7カ月連続、輸出数量は8カ月連続のマイナスを記録している。アメリカ向け輸出金額の前年比はプラスを保っているものの、欧州やアジア諸国向けは減少傾向が続いている。このため、鉱工業生産統計では、在庫が積み上がりつつあり、いずれ生産水準を大いに圧迫しよう。つまり、外需・製造業の現状や先行きも暗い。

内需・非製造業も、外需・製造業も、企業を取り巻く環境が悪化しており、利益見通しの下方修正が続いている、ということになれば「日本株を買えない」と長期投資家が考えるのは、自明以外の何物でもなかろう。

アメリカの株価は先行き本当に大丈夫なのか?

では、なぜ長期投資家が日本株を売り一方に傾けないかと言えば、最大の要因は、アメリカの株価が堅調で、それが日本の株価水準を支えてしまうと見込まれるため、日本株を売り一方にも傾けにくい、という心理が働いているからだと考える。

だが、これまで予想外に堅調に推移してきたアメリカの株価については、先週央から頭が重くなり、それが先週後半の日本株の乱高下の下地になったと考えるし、これからアメリカ株には逆風が吹いてくるだろう。まず、最近のアメリカ株の支持要因になったのは、主に2つあったと考える。1つは前述の米中通商交渉の進展期待であったし、もう1つは連銀の利下げ期待だ。

このうち、米中通商交渉については、構造問題(中国における、知的財産権の侵害、巨額の補助金、先端技術の移転強要)の解決を迫るアメリカとそれに抵抗する中国、といった溝は深く、交渉進展は予想しがたい。また、6月の米中首脳会談直後に、ドナルド・トランプ大統領は「中国が大いにアメリカ産農作物を買う」「ファーウエイ社へのアメリカ企業からの輸出制限を緩和する」と語り、それも米中間の雪解けムードを広げることとなった。

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