富士登山で「子供と真剣に向き合う」男の挑戦 東北復興のために高校生1000人を目指す
「初めから諦める自分を変えたくて」
鈴木千紘さん(福島県立田村高等学校卒業)は、2014年に富士登山に参加しました。
「田村高校の先輩でもあり、憧れだった田部井淳子さんと一緒に富士登山できるということで、興味を持ったのがきっかけでした。そのときは、何事にも挑戦する前から『ちょっと自分にはできなさそうだな』と初めから諦めている自分がいたので、自分を変えるきっかけになったらいいなと思って参加しました」と、鈴木さん。
東日本大震災当時は中学2年生、ソフトボール部に所属していました。
「急に震災が起こって。ちょうど部活も楽しい時期でやっていたので、『このまま皆とバラバラになっちゃうんじゃないか』とか、いろんな不安がありました。
せっかくチームもいい感じにまとまってきて、新人戦に向けて頑張ろうというときだったので。学校生活も、『大切な仲間と過ごせないんじゃないかな』という思いがありました」
「1歩ずつ」という言葉に励まされた
2014年の富士登山では、田部井淳子さんの言葉に鼓舞され、見事に登頂を果たしました。
「登頂まで本当につらくて何回も戻ろうと思ったんですけど、みんなと支え合いながら、田部井淳子さんにかけていただいた『1歩ずつ』という言葉を合言葉にして登りました。頂上に着いたときの景色は忘れられないです。今まで見たこともないきれいな景色で。本当に神秘的で。すごい達成感もありました」
今年の4月から、福島市内の病院で看護師として働き始めた鈴木さん。登山前は何事も挑戦する前から諦めていた鈴木さんでしたが、「どんなことでも興味を持ったことに挑戦してみよう」と、看護師と養護教諭の免許をダブル取得しました。
「高校生の頃から看護師になりたいと思っていました。でも、外で遊べなかったり、転校した先で孤立してしまったりしている子どもたちと関わって、そんな子どもたちを保健室から支えられたらと養護教諭も目指したいと思って。
看護学校を出て、大学に行って養護教諭の免許を取って。富士登山する前の自分だったら『看護師でいいや』となっていたと思うのですが、『やりたいことは挑戦してみよう』という気持ちになれたので、両方取りました。勉強も実習も大変なときもあったのですが、つらいときに『1歩ずつ』という言葉に背中を押してもらいました」