富士登山で「子供と真剣に向き合う」男の挑戦 東北復興のために高校生1000人を目指す
田部井進也さん自身、東日本大震災では福島県内で被災。福島の子どもたちに対して「責任」を感じていると話します。
「東京と福島の温度差は感じますし、福島の中でも温度差をすごく感じます。『忘れちゃいけない』という気持ちとともに、今はこういうプロジェクトをやっていけたらと思います。
福島の第一原発事故は、東京電力だった。福島の子は何もしてないのに犠牲になって。当時、僕らも福島にいたのですごく感じますが、『外で遊んじゃダメ』とか、『ガイガーカウンター(放射線測定器)をつけて遊ぶ』という規制をしてしまったのは大人。その大人が責任を取るには、彼らが自由に遊べる空間を作るとか、チャンスを与えてあげることなんじゃないかなと感じています」
「本気で向き合ってくれる大人」と出会える場を
第7回となる2018年の「東北の高校生の富士登山」には、岩手、宮城、福島の計38校から96名の高校生が集まりました。
「学年も部活動もみんなバラバラ。学校行事ではないので、強制ではない。本当にすごいなと思うのが、募集チラシを学校に置いて、それを子どもたちが見て参加してくるんですよね。それってすごくないですか?すごい一歩を踏み出していると思う。踏み出したことの重要性を伝えていきたいなって思いますね」と、田部井さん。
一歩踏み出した高校生には、いろんな大人と出会い、「もっと色んな目線で見てもらいたい」と話します。
「高校生って、大人との接点が異常に少ないなと思っていて。結局、親、学校の先生、習い事の先生など、基本的に先生が多い。(参加する高校生は)就職とか進学に関してすごく悩んでいるんですよね。だけど、学校で相談すると、やっぱり『先生と生徒』。
だけど、ここだと人生の先輩が目の前で歩いている。例えば、看護師さん、お医者さん、山のガイドさん、山のメディアの方、一般企業に勤められている方など、いろんな職業の方たちが集まっている。そういう大人を見られただけでも、『こういう仕事があるんだな』とわかる。
『富士山に登らせたい』という大人が集まっているので、本気の大人の姿を彼らに見せられると思う。僕らは『お客様』でもないし、『先生と生徒』という間でもない。『仲間』として富士山に行くぞと」