富士登山で「子供と真剣に向き合う」男の挑戦 東北復興のために高校生1000人を目指す
実際には、高校生を東北から2泊3日で富士山に連れて行くには、バス代、宿代、登山装備一式のレンタル代、登山ガイド代などを含め1人当たり8~9万円かかります。しかし、高校生のお小遣いで参加できるよう、参加費は3000円を貫いています。その差額分は、全国からの支援や協賛を募ることで補ってきました。
「富士山までのバスの中で、『本来であれば8〜9万円かかるけど、みんなの参加費は3000円だよね。その差額は、本当に多くの人たちが寄付をしてくれたんだよ』と、必ず話すようにしています。『支援慣れ』されても困るので。震災があって、助けてくれるのが当たり前になってしまうのはよくないと思っていて。
10年後、自分が成長したときに、今度は支援する側に回って日本を支えてくれる人材になってくれたらという思いで、必ず話しています」と、田部井さん。
その思いは、確実に参加した若者たちに届いています。
「実際に(田部井さんが開催したイベントで)ボランティアをさせていただいた際に、『運営するってこんなに大変なんだ』と知りました。今私たちにできることは何かなと考えて、(富士登山の)事前説明会でお話しさせていただいて。今度は支える側に立ちたいと思っています」(鈴木さん)
「行きのバスの中で、進也さんが思いを込めて『こういうふうに支えてくれる人がいるんだから、みんなも真剣に登ろうぜ』という強い言葉をかけてくださって。『頑張っている人のことは、みんな支えようとしてくれるんだな』と思って。今後も続けていくためにはそれが不可欠だと思うので、自分自身も含めてみんなで支え合っていければいいかなと思っています」(佐藤さん)
参加した高校生が創るこれからの東北に期待して
「東北の高校生1000人誘うまで続けたい。参加した高校生たちが10年も経って大人になったら、それは、どこにいたとしても東北復興の力になるはず」と語っていたという田部井淳子さんの遺志を継ぎ、これからも「東北の高校生の富士登山」プロジェクトは続いていきます。
「継続していくことの重要性をすごく感じます。続けることによって輪が大きくなっているのをひしひしと感じます。今も、のべ575人のOB・OGの子たちがいてくれて。『無事成人しました』とか、『結婚しました』とか『子供が生まれました』とか写真で送ってくれるんです。
実際、僕らは3日間しか一緒にいない。3日間しかいなかった大人に対してそんなことするのかなって考えたときに、彼らの中に与えられた影響は大きかったのかなと感じます。そういうふうにインパクトを与えて、彼らの人生にとって『すごくよかったな』と思えるプロジェクトにしたいなと思います」(田部井さん)
「富士登山は、高校生が人生の糧になるような何かを見つけられる最高な機会です。本当に多くの方の支えで成り立っていることは知っていて。これから先もずっとこの素敵なプロジェクトを続けるために、皆さんの協力をよろしくお願いします」(鈴木さん)
「同じ同世代の仲間と一緒に、温かい言葉を大人の人にかけてもらいながら、ゆっくりゆっくり上がっていったあの経験は、高校生の時代にしかできないし、富士登山でしかできない。それを高校生のうちに後輩たちに感じてほしいなと思います。1人で申し込むのは大変かもしれないけど、そこには必ず仲間がいる。『行きたい』と思ったら踏み出してほしいと思います」(佐藤さん)
1歩踏み出すきっかけとなっている「東北の高校生の富士登山」。これからの東北を創る若者が挑戦できる機会がこれからも続いていくよう、たくさんの支援・応援が必要とされています。現在、クラウドファンディングで支援を募集中、2019年8月8日まで(https://bit.ly/2Y2lFJL)。
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