富士登山で「子供と真剣に向き合う」男の挑戦 東北復興のために高校生1000人を目指す
心に刻まれた田部井淳子さんの言葉と思い
佐藤優之介さん(福島県立福島南高等学校卒業)は、2015年、2016年の2度、富士登山に参加しました。2015年は悪天候の影響で6.5合目までしか行けず、翌年も特別に参加が許され、登頂を果たしました。
東日本大震災当時は、小学5年生。通っていた福島市立福島第一小学校で被災。
「鮮明に覚えています。先生が『机の下に潜って』と言う前に、自分たちで自ら潜っていたくらい大きな地震で。校庭に出されて。仲良しの近所のおばさんと再会したときに、『元気でよかったね』っていう言葉を交わして。そこからはずっと自分の学校が避難所になったので、そこで過ごしました」と、佐藤さん。
登頂できなかった1回目の富士登山の際に田部井淳子さんがかけてくださった言葉が、いまだに胸に刻まれていると話します。
再生可能エネルギーに関わる仕事をするのが夢
「田部井淳子さんがおっしゃっていた言葉『1歩1歩、歩けば必ず頂上にたどり着く』を経験させたいからこそ、これを続けているという面もあると思っていて。僕たちが登れなくなったとき、『どうしてもそれを経験させて、東北の高校生に足跡を残していってほしい』と、6合目から7合目を目指して。
7合目付近は、本当に風が強くて雨が痛いほどだったんですけど。その危険すれすれの天候の中、僕たちのペースを見ながら『7合目までは登らせてあげたい』という淳子さんの思いもあって登らせていただいて。自然の脅威もそうだけど、淳子さんの熱い思いを感じられて。これはもっと大切にしていきたいなって思いました」
佐藤さんは、現在東北大学工学部の2年生。再生可能エネルギーに関わる仕事をするのが夢です。
「福島県の事故もあったので、新しいエネルギーについて考えられればいいかなと思うのと同時に、やっぱり田部井さんを見てきて、今のうちにやれることは経験して頑張っていきたいなと考えていて。ボランティアもそうだし、自分でできることをやっていきたい」