7年ごとに来る「夫婦危機」脳科学から見た必然 定年前後の最大難関は乗り越えられるか

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しかしあれは、男性脳の必要不可欠。しなびた白菜みたいにだらけている夫の脳の中では、激しく電気信号が行き交っている。

ちなみに、幼い男の子のぼうっと時間は、のちの理系力の基礎になる。小脳発達臨界の8歳までに、どれだけぼうっとさせたかで、のちの理系の能力が決まる。ぼんやりしがちな男の子は、ぼうっとさせてやらなきゃいけないのだ。

妻が身に付けるべき3秒ルール

さて、ぼうっとしている男性の脳の写真を見て私は驚いた。右脳と左脳の連携信号を潔く断ってしまっているのである。ここが働かないと音声認識がかなわない。

つまり、暮らしのそこここで、男性たちは、音声認識のエンジンを切っている。だからいきなり全開で話しかけられても、聞き取れないのだ。「あなた、あの件、どうなったの?」「あなた、それそれ、それ取って」も、すべて「ほぇほぇほぇほぇ、ほぇっほぇ」と聞こえている。

なので、「はぁ?」と聞き返してくる。この「はぁ?」が、女には腹が立つ。

『定年夫婦のトリセツ』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

私たち女性は、起きてから眠るまで、音声認識のエンジンを切ることはほとんどない。いきなり話しかけられても、言われたことの意味くらいはわかる。だから、この夫の「はぁ?」が「なんで、俺が?」に聞こえるのである。まさか、「聞き取れませんでしたけど、何か?」だなんて、思いもよらない。

このムカつきは男性にとってはまったくの濡れ衣だ。幻想に腹を立てているだけ。日々の暮らしから、この無駄なムカつきをなくそう。

夫に話しかけるときは(息子や孫も同じ)、彼の視界に入るようにして声をかける。そして、声をかけてから3秒待つ。「あなた、(1)(2)(3)、〇〇のことだけど」という感じ。

3秒あれば、男性も音声認識のスイッチが入れられる。夫の「はぁ?」や、いぶかしげな顔を見ないだけでも、暮らしはかなり楽になる。

黒川 伊保子 人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家

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くろかわ いほこ / Ihoko Kurokawa

1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピューターメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピューターを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。近著に『妻のトリセツ』(講談社+α新書)、『女の機嫌の直し方』(集英社インターナショナル)、『夫婦脳』(新潮文庫)など多数。

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