新海監督「天気の子」で田端が聖地になる予感 特異な駅前地形がストーリーの起伏を生んだ

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さらにいえば、田端駅のすぐ北側には京浜東北線で都内唯一のトンネルがある(大宮方面への北行線のみ)。これは明治29(1896)年、田端駅が開業したときはなかったもので、線路を増設する際、新たな線路スペースがない(または買収できない)ため、武蔵野台地の丘にトンネルを掘ったものである。

画面左に道灌山トンネル坑門の一部が見える(編集部撮影)

田端駅は移転など複雑な経緯をたどるが、トンネルの存在は、個性的な地形に立地することを示唆しているわけだ。

山手線駒込―田端間に昭和の初めごろまで道灌山トンネルという数十mほどのトンネルもあった。現在その坑門の一部が内回り側の切り通しに露出していて、山手線車窓から見てとれる。

近年、アニメ映画の舞台になった場所を訪問する「聖地巡礼」がブームになっている。ワールドワイドなヒット作となると、世界中から「聖地巡礼者」が押し寄せる。

それが数年以上にわたる場所もある。例えば、1995年に公開されたスタジオジブリの映画『耳をすませば』の舞台となった京王線の聖蹟桜ヶ丘駅は、2012年から同映画で使われた「カントリー・ロード」を発車メロディーに用いるなど、鉄道会社側でファンサービスを行う例もある。

アニメと聖地の新しい関係

江ノ電の鎌倉高校前駅付近の踏切は、アニメ『スラムダンク』の舞台となったためで、アニメが放送されたアジア各国からの訪問者が訪れ、多くのファンがアニメと同じアングルで写真を撮影する。しかし、踏切が閉まって電車がやってくるときなど、車道に入り込む者が多いなど、地元の方々に迷惑がかかっているようだ。

映画の予告編にも出てくる田端駅南口付近。映画を機に「聖地巡礼者」が増えるか(編集部撮影)

そのため、近年では制作サイドでも舞台の選定に気を使う。雰囲気のいい路地でも、そこにもし多くのファンがやってきて近所の人に迷惑がかかるような場所の場合、そこを使うわけにいかない。

今回の天気の子でも、周辺に民家がない田端駅南口を舞台に選んだように、その点を考慮した様子がうかがえる。

今回の天気の子は、アニメと「聖地」の新しい関係を提示したといえるかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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