沈むトヨタ自動車、販売減と円高で今期赤字幅拡大、来期も赤字脱却は至難

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沈むトヨタ自動車、販売減と円高で今期赤字幅拡大、来期も赤字脱却は至難

トヨタ自動車は、今2009年3月期業績予想を下方修正した。これで11、12月に続く、3度目の下方修正だ。

下方修正の2大要因は「販売減」と「円高」である。

今期の連結販売台数は732万台と、前期の891万台から、何と159万台も減る。工場1つで年産約30万台として、ざっと5工場分が要らなくなる計算だ。主な内訳は、北米向けが207万台(前期比88万台減)、国内向けが194万台(24万台減)、欧州向けが103万台(25万台減)など。特に高価格の大型車向けが多い北米市場低迷が痛い。これら販売減だけで、1兆3900億円のマイナス要因となる。

円高も響く。年間平均の想定レートは、1ドル100円、1ユーロ143円。前期はそれぞれ、114円と162円だったから、対ドルでは14円、対ユーロでは19円の円高になる。そのほか、タイバーツなどアジア通貨の円高もあり、円高では、8900億円のマイナス要因となった。

営業赤字は4500億円の見込み。12月時の営業赤字1500億円からは3000億円の下方修正で、前期の営業黒字2兆2703億円からは、約2兆7200億円もの落ち込みとなる。さらにグループ会社からの受取利息・配当金の減少や、中国など持分法投資損益の縮小も加わり、最終損益でも3500億円の赤字転落だ。

配当は既に中間配で65円を実施しており、会社側は期末配を「未定」としている。期末は55円から65円、通期では120円から130円となる公算が大きい(前期は通期で140円配)。もちろん、トヨタ初の減配である。

注目される来10年3月期は、連続営業赤字はまず免れない、と「東洋経済オンライン」は見ている。

昨年12月末時点でも棚卸資産は増えており、今年1~3月には国内生産半減にまで減産のペースを加速している。が、肝心の販売は、1月も前年同月比24%減で、市場縮小のトレンドはおさまっていない。来期の連結販売台数を700万台(今期見込み比32万台減)と仮定し、1台当たり80万円の営業利益が減るとすれば、「約2500億円」のマイナス要因と計算できる。次に来期の為替想定を現状の1ドル90円、1ユーロ116円とする。今期想定からは対ドルで10円、対ユーロでは27円の円高になる。トヨタの場合、1円の円高でドルでは400億円、ユーロでは60億円の営業利益が減るから、それぞれ約4000億円、約1600億円、計「約5600億円」のマイナス要因だ。

一方プラスもある。資材価格下落は、最も効果の大きい鋼材を中心に約3000億円のプラス要因。さらに期間従業員の削減をはじめ、人件費などの圧縮で3000億円超のプラス要因を捻り出すとする。

こうしたプラス、マイナスを足していくと、差し引き、ざっと「2000億円のマイナス要因」と推定できる。結果として、今期の4500億円の営業赤字から、来期は6500億円の営業赤字と見込めるだろう。これでも販売台数の落ち込みを控えめに見ており、少なくとも今期よりも赤字が拡大するのは間違いない。

実はアナリストによっては、最悪なら来期、「1兆円の営業赤字」を見込む声も漏れている。「東経オンライン」は、今期を会社計画と同じ4500億円の営業赤字、来期を独自予想で6500億円の営業赤字と当面おく。ただし今後の追加取材次第で、再度数字を見直す場合もある。


《東洋経済・最新業績予想》
 (百万円)    売 上  営業利益   経常利益  当期利益
◎本2008.03   26,289,240  2,270,375  2,437,222  1,717,879
◎本2009.03予  21,000,000   -450,000   -500,000   -350,000
◎本2010.03予  20,000,000   -650,000   -700,000   -700,000
◎中2008.09   12,190,405    582,068    636,487    493,469
◎中2009.09予   9,500,000   -400,000   -400,000   -400,000
-----------------------------------------------------------
          1株益\    1株配\
◎本2008.03        540.7         140 
◎本2009.03予      -111.6     120-130 
◎本2010.03予      -223.3     110-120 
◎中2008.09        156.9          65 
◎中2009.09予      -127.6       55-60 
大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。資産運用や相続、年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。大野和幸(X)

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