リニアでJR東海と対立、静岡県の「本当の狙い」 水資源問題で工事認めず、「代償」は空港駅?

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一方の川勝知事は、「JR東海のタイムスパンに県が影響されることはない」と、どこ吹く風だ。「昔から“急がば回れ”ということわざがある。どうしても2027年に開業したいなら、静岡をルートから外せばいい」とまで言い切った。

こうした事態を、ほかのリニア沿線自治体は複雑な心境で見守っている。愛知県の大村秀章知事は、「リニアはいわば国策事業。JR東海と静岡県だけの協議ではなく、国が前面に出て調整し、事業を前に進めていく責任がある」と国の介入を強く要望。名古屋駅前では2027年開業に向けて大規模な再開発が始まっており、開業の遅れは名古屋経済にも支障を与えかねない。

もっとも、大井川の水資源問題は、あくまで表面的な争点にすぎない。6月11日の会見で川勝知事は、「リニア工事は静岡県にまったくメリットがない」として、「工事を受け入れるための“代償”が必要」と言い出したからだ。

新幹線に「空港駅」を

リニアはJR東海が沿線自治体からの強い要望をのみ、同社が建設費を全額負担して東京・愛知以外の4県にも駅を建設する。一方、静岡県内の走行ルートは全区間が人里離れた山奥なので、当初から駅設置のニーズがまったくなかった。

川勝知事は、「静岡には駅を造らないのだから、各県の駅建設費の平均くらいの費用が(代償の)目安になる」と発言。ちなみに、リニア途中駅の1駅当たりの建設費は約800億円と推計されている。さすがにこの露骨な要求は物議を醸し、愛知県の大村知事は「公職者なのだから責任を持って発言すべき」と苦言を呈した。

では、静岡県がJR東海に求める800億円相当の代償とは、いったい何を意味するのか。地元や鉄道関係者の間で公然とささやかれているのが、東海道新幹線に富士山静岡空港駅を新設することだ。

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