「ジョンソン新首相」ならブレグジットは大混乱 高まる総選挙、2度目の国民投票のシナリオ

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一方、インターネットによる世論調査会社YouGovが6月26~27日に行った調査によると、2017年の総選挙で保守党に投票した人のうち、新首相にふさわしいのがジョンソン氏だと思うのは48%、ハント氏は36%で、その差は接近している。

そして、労働党など野党支持者を合わせた調査対象全体では、ジョンソン氏が29%、ハント氏が41%で、支持は逆転する。特に「誠実さ」や「道徳的な人格」という点でハント氏の評価が大きく上回っている。実際の党首選は保守党員による投票のため、ジョンソン氏優位に変わりはないが、イギリス世論全体としてはハント人気のほうが上という事実に注意が必要だ。

失言多く、言動にブレが目立つジョンソン氏

ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり・主席研究員は、ジョンソン氏優勢を認めつつも、「キャッチーな発言などで人気は高いが、失言が多く、前言を平気で翻すなど、言動にはブレが目立つ。党首選の討論会に応じず、私生活でのスキャンダルの説明もしないなど、首相としての適格性を疑問視する声は多い」と指摘する。

一方、みずほ総合研究所の吉田健一郎・上席主任エコノミストは「現状ではジョンソン氏の党首選勝利が濃厚。ハント氏はメイ首相と同様、国民投票でEU残留に投票しており、ジョンソン氏にとって御しやすい相手」とみる。むしろ第3位で敗退したマイケル・ゴーブ環境・食糧・農村相が相手だと、国民投票で共に離脱キャンペーンを率いたうえに、ジョンソン氏よりも穏健派寄りで離脱穏健派の支持も取り込めるため、やりづらかったとの見方だ。

また、昨年春まで約6年間ロンドンに駐在していた丸紅経済研究所の田川真一副所長は「ハント氏は閣内では若手で、やや線の細い印象。(欧州議会選などでの大敗で)基盤が揺らいでいる保守党内では、労働党党首のコービン氏と対抗できるのはジョンソン氏との評価が多い」と話す。ただ、ハント氏が逆転する可能性も捨て切れないと読む。

ジョンソン氏の言動に危うさは否めないが、現時点では勝利がほぼ確実だとして、「ジョンソン新首相」ならブレグジットはどうなるのだろうか。

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