帰国子女にもある「英語格差」の知られざる実態

日本への帰国者が殺到する「高1の壁」

多くの日本企業は、こうした地域では子どもを帯同する駐在員に対して日本人学校の学費分のみ(年間およそ20万円から150万円・海外子女教育財団調べ)を補助している。ほとんどの地域では日本人学校は中学部まであるため、仮に小中学校から英語習得のためにインター校に入ろうとした場合、学費の差額分(インター校の学費は日本人学校の約3倍といわれる)を家庭が負担しなければならなくなる。

高校生になればインター校の学費を負担する企業は増えるものの、高校3年間だけで日本の帰国子女枠の入試に合格できるほどの英語力を子どもが身に付けられるかは未知数。こうした不安もあり、働いている親が単身で海外に残る傍ら、子どもとパートナーを帰国させ、日本の高校で教育を受けることを選択する家庭が出てくるわけだ。

企業によって補助に違いも?

海外子女に対する学費などの補助も企業によって差があるとみられる。例えば、1000人規模の海外駐在員を抱える大手商社4社に子女教育支援の状況を質問したところ、一部条件はあるものの、日本人学校の学費はもちろん、インター校の学費やスクールバス代など諸経費を含めて会社負担としているところが多かった。中でも三菱商事は、「海外駐在員の子どもの教育の重要性を充分認識し、幅広い制度を整備し、精神的・経済的負担の軽減をはかっている」と、子女教育を積極的にサポートしている。

英語以外にも懸念がある。親の赴任期間が決まっているため(おおよそ3~5年)、高校卒業まで海外に残れない可能性があることだ。子どもの卒業までに親が帰国を命じられると、子は現地に残って高校を卒業するか、日本の高校に編入するかの選択を迫られる。残って高校を卒業する場合は通常、企業からの資金補助がなくなるため、現地での生活費から高額な学費まですべて家庭で負担しなければならなくなる。

こうしたリスクを総合的に判断して、高校入学を控えた子どもを帰国させる決断をするのは親であることが多い。だが、駿台の髙島氏はかつての教え子の「親と自分は全然文化が違う、話にならない」という言葉を引きながら、受験戦争を経験した世代の保護者が、自身の経験を子どもにそのまま当てはめようとすることに警鐘を鳴らす。

企業の海外進出先が多様化する中、複雑化する帰国子女の教育事情。赴任先が英語圏なのか、英語圏でなければどういう学校で学習をするのかによって英語力や学力に差がつきかねない状況の中、帰国子女の学習サポートをするベンチャー企業も出てきている。

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