帰国子女にもある「英語格差」の知られざる実態

日本への帰国者が殺到する「高1の壁」

例えば、国内で家庭教師の斡旋事業を行うトモノカイが提供する「EDUBAL」というサービスでは、海外の高校を卒業した学生が教師となり、インターネットを通じて全世界にオンライン家庭教師を行っている。海外では日本人の多い一部地域を除いて、英語での教育に対する日本語サポートを受けられないことが多いからだ。これはとくに、現地校やインター校で、英語で行われる授業についていけない子にとってはありがたいサービスだろう。

ネット経由で家庭教師サービスを提供する「EDUBAL」の授業風景(写真:トモノカイ提供)

トモノカイでEDUBALのマーケティングを担当する中原立貴さんは、「ネットさえあればサービスを受けることができるので、日本人はその家庭しかいないんじゃないか、というくらい日本人の少ないところのほうが、利用されるのではないか」と話す。実際、ケイマン諸島やリヒテンシュタイン、モザンビークやセブ島などの日本人が少ない地域の子どもにもサービスを提供しているという。

海外で学ぶ高校生の実態わかりにくい

一方、政府による海外子女や派遣元企業に対する支援は手厚いとは言いがたい。義務教育課程については「最大限の支援を行うべき」とするが、義務教育ではない高校生については政府の統計すら存在せず、何人の子が、どの国や地域で、どのような学校に通っているのか誰も把握していない状況だ。

すでに進学率が9割以上となった高校生については、国内では公立高校の授業料を事実上無償化し、留学についてもさまざまな制度を設けて支援に乗り出している。ところが、海外で学ぶ高校生については「自助努力に任せる」というのだ。

政府に対して支援の拡充を求める動きもある。この6月、日本在外企業協会や日本貿易会など4団体は連名で、「海外子女教育の拡充によるグローバル人材育成に関する要望」と題する要望書を自由民主党海外子女教育推進議員連盟、外務省、文部科学省に提出。要望書は義務教育課程や就学前教育に関する内容が主だが、「海外子女の教育環境の拡充はグローバル人材育成の早道」と指摘し、「帰国子女の国内校への積極的受け入れと環境構築」などを求めている。

小学校の英語必修化に始まり、大学入試制度改革など政府は日本人の英語教育、ひいてはグローバル人材の育成に躍起になっている。だが、文字通りグローバルな環境で学べたかもしれない駐在員の子どもたちが将来に不安を抱え、高校入学を前に帰国するという状況は改善される兆しがない。日本政府が本気でグローバル人材を育成したいと考えているのなら、海外子女が一層安心して海外で学ぶことを選択できる環境整備が求められている。

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