「わたし、定時で帰ります」が中国で共感呼ぶ事情 日本の若者と同じく働き方に関して葛藤する

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また、今の世代は前の世代に比べると、おもちゃの種類から留学先、恋愛相手の探し方から就職先候補まで、選択肢が大幅に増え、すべて自分で選ばなければならない。このような変化から、「自分で決めたい」「自分のために選びたい」という意識が自然に高まっている。

したがって、仕事より家族(自分の生活)を重視するのも当然だと思うし、「喧伝されている働き方」より、「自分にとってはいい働き方」が優先順位の上に入り、「わたし、定時で帰ります。」で出てくる「これ以上頑張りたくない」という考えには非常に共感をするのだろう。

「個人・家族至上主義」

中国人の働き方を考えるうえで前提となるのは「個人・家族至上主義」だ。恐らく昔から中国人と一緒に働く日本人(その多くは管理職だが)は、中国人社員の働きぶりに驚いているだろう。いくら仕事がたまっても、「家に用がある」と言ってさっと早退する。

仕事をお願いしたら、「これは私の仕事範囲外」だと言い、きれいさっぱり断る。プライベートの宅配は昼間に家に人がいないので、会社まで配達するようにしている(専用の宅配コーナーを作る中国企業も多い)。兼業は当たり前。やめたいときは「やめる」といい、プロジェクトの進捗状況に関心がない……。

こうした特徴から、中国人は「不真面目」「無責任」「全然使えない」と評されることもあるが、これは日本人の働き方と違うだけとも言える。

民間企業の場合、新卒一括採用+年功序列+終身雇用で特徴づけられる日本型と違い、中国はアメリカ式の「キャリア志向」型である。新卒採用は決まった時期がない。あくまで実力主義なので、大学時代からいろんなインターンシップをすることで希望する企業に採用してもらう。その後、自分が進みたい道で経験を積んでいき、2、3年後1.5倍以上の給料で転職する。

「転職=処遇アップ=有能な証し」として見られ、日本人の旧来型の「一生一社」は理解しがたい。むしろ転職しない人は転職できる能力を持っていないと思われる。したがって、つねによいところに転職できるよう、自分の能力向上に関係なさそうな依頼を断るのも必然だし、自分のキャリアを最優先しているので、自分の能力と処遇に見合うところに早く行きたいと思っている。

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