1区田口雅也はライバルである駒澤大と日本体育大を徹底マークし、2区服部勇馬はマイペースを貫き、確実につないだ。「往路優勝するためには自分が稼がないといけない」という3区設楽悠太が駒澤大を逆転して、55秒のリードを奪取。4区で駒澤大の猛攻撃にあったが、5区では設楽啓太が「トップでゴールする」というミッションをクリアした。
復路を2位駒澤大より59秒先にスタートした東洋大。酒井監督は「1分差あるぞ」と選手たちに声をかけた。「59秒」ではなく「1分」という“言葉”が選手たちに精神的なゆとりを与えた。
6区日下佳祐は「駒大だけには負けられない」と後続のライバルを意識。「59秒は微妙な差でしたが、見えなくなるまで突き放せば、追いかける側は厳しくなる」と下り区間の20.8kmで駒澤大から18秒のリードを奪い、優勝への流れを一気に引き寄せた。もし、東洋大が6区で駒澤大に18秒負けていれば、まったく違う結果になっていたかもしれない。それぐらい、日下が駒澤大からもぎ取った18秒は大きなものだった。
東洋大は7区服部弾馬、8区髙久龍が連続区間賞。9区上村和生も区間4位と好走して、10区の4年生・大津顕杜に大量リードでつないだ。当初は復路のエース区間である9区の候補だったという大津だが、調子が上がらず、10区に入った。「7~8区の後輩が作った貯金を使うわけにはいかない。最低でも区間賞というのは自分の中にありました」とハイペースで突っ込んで、ゴールまで押し切った。
東洋大は大学駅伝界で、最も選手層の厚いチーム。どの大学よりも厳しい選手選考を勝ち抜いてきた10人には、その時点で自信とプライドがあった。その“チーム力”こそが、東洋大の強さの源になっている。
レース翌日に設楽兄弟、大津、日下ら4年生の優勝メンバーを取材したが、彼らは面白いことを話していた。テレビ出演や取材などを受けているにもかかわらず、「優勝した実感があまりなくて、普通の1日みたいです」と言うのだ。反対に1年前、2位で箱根を終えた翌日は、「負けた実感が強くあった」という。強烈な“敗北感”があったからこそ、選手たちはさらに強くなれたのかもしれない。
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