老後資金「2000万円騒動」の本質は何なのか 年金改革先送りは形を変えた「利益誘導策」だ

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金融庁の報告書に与野党から激しい批判が浴びせられた(編集部撮影)

95歳まで生きると、公的年金以外に2000万円の資金が必要であるという金融庁の金融審議会の報告書が、政府や与野党から総攻撃を受けている。

閣内や自民党幹部らが「誤解を与える」「国民に不安を抱かせる」などと激しく批判すると、担当閣僚である麻生太郎副総理兼財務相は報告書の受け取りを拒否してしまった。

金融庁報告書はまっとうな提言だ

しかし、この騒ぎ方は明らかに間違っている。問題の本質は現在の年金制度のままで将来、高齢者は安心して生活できるのかどうかということであり、正直に推計した報告書がけしからんというのは、真実を隠せというに等しい。

そもそも金融庁は年金制度を担当する役所ではない。報告書は、年金だけでは毎月の生活に不足額が生まれるから、一人ひとりが長寿に備えた資産の形成や管理に取り組む必要があることを指摘したうえで、金融機関などはこうした社会的変化に適切に対応するため、「金融商品、金融サービスを提供することが要請されている」と強調している。

力点は、所管する金融業界に対して、高齢化時代に対応した商品開発を求めることに置かれており、金融庁本来の役割を踏まえたまっとうな提言といえる。

ところがその中の2000万円足りなくなるという部分だけが切り取られ、大騒ぎになっている。

理由は単純だ。7月に参院選を控えたこのタイミングで、高齢者を不安に陥れるような話を政府が発信するのでは、与党に不利な材料になるからだ。自民党にとって高齢者は今や最大の票田である。この票が逃げてしまわないよう、幹部総出で必死に火消しに走っている。

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