「何となくAI 」、実はアルゴリズム活用だった 真に「AIを導入した」と企業が言ってよい条件

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今までは、「どのトラックに誰を乗車させ、何をどこに運ぶか」という人間が考えた配車計画をシステムに記録し、周知することがITの目的となっていました。さらに、計画に対する実績もシステムに記録して、収支管理や労務管理に活用する。まさに記録するためのツールとして、期待されていたわけです。

しかし、配車計画そのものも、AIにやってほしいという声があがります。配車計画は限られたベテラン従業員が担っていることが多く、その従業員が退職したら会社が回らないといった切実な話も聞かれます。AIで配車計画を立てられるようになれば、そうした懸念はなくなり、さらに効率的な計画が立てられるようになるのではという期待が高まります。

まさにAIの存在が、ITの利活用シーンを再発見しているのです。

万能なAIが存在しないから、アルゴリズムが生きる

では、配車計画に活用できるAIとは何でしょうか。今までのシステムに蓄積していた配車計画と実績をデータとして入れれば、AIが自動的に解決してくれるような気もしますが、そんな魔法のような技術は存在しません。「AIを導入すれば、何でも解決できる」というのは、詭弁に近い営業トークです。

以前、ある経営者から「何をやればAIを導入したと言ってよいのか?」という質問を受けたことがあるのですが、AIの定義がそもそも存在しないので、回答に苦労しました。

いわゆるAIとして現在取り上げられている技術に、ディープラーニングをはじめとする機械学習を挙げることはできます。AIというバズワードと違って、機械学習は真っ当な技術です。しかし、それが何でも解決してくれるというわけではありません。

配車計画に活用できるのは、実は多次元配列とヒープ(『爆速!アルゴリズム』の第12章「スーパーマーケットを効率良く回る」で紹介)や、組み合わせ最適化という領域のアルゴリズムであり、機械学習ではないかもしれません(もちろん、機械学習の活用も考えられます)。

人間の思考を代替することが目的のITであっても、既存のアルゴリズムをうまく活用すれば解決できることが多く、ほとんどの場合、実はすでに行われています。おそらく、既存の自動配車計画に対応したシステムは、そうしたアルゴリズムを使用しているのでしょう。

しかし、そうした比較的高度な機能を有するITが、何となくAIだと言われているような風潮も感じられます。これも、AIブームの一面と言えるでしょう。

私は、AIブームをけなしているわけではありません。AIブームの真相を見極める必要はありますが、重要なのは、このAIブームがITへの期待を高めてくれているということです。

AIへの期待が、ITをより高度に、ビジネスに利活用していこうという意欲を生み出しています。その実態が既存のアルゴリズムを活用しただけであっても、機械学習の恩恵を十二分に受けるものであっても、ビジネスの現場ではどちらでもよいことなのです。

ただし、これからの時代には先進的な技術だけでなく、既存のアルゴリズムで何ができるかを知っておいたほうがよいのは間違いないでしょう。そこに、ビジネス上の課題を解決するカギが隠れている場合がありますし、ディープラーニングのような先進的な技術と組み合わせることで生きるアルゴリズムも存在するはずだからです。

井上 研一 ITコーディネーター/ITエンジニア

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いのうえ けんいち / Kenichi Inoue

北九州市出身、横浜市在住。AIやIoTに強いITコーディネーターとして活動。北九州市主催のビジネスコンテスト「北九州でIoT」に応募したアイデアが入選、メンバーと株式会社ビビンコを創業し、代表取締役に就任。「中高年のためのプログラミング教室」Tech Garden School講師を兼務。著書に『初めてのWatson』『ワトソンで体感する人工知能』(ともにリックテレコム)など。セミナーや研修講師での登壇多数。

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