バイクの街、台湾・高雄で鉄道利用は広がるか MRTやLRTが続々と開業、新路線の計画も

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縮小

こうした高雄メトロの戦略は、MRTの経営難によるところが大きい。「現在1日平均17万人いるMRTの利用者を20万人とすることを目標としているが、(いま開通している2路線の)旅客が今後大きく増えることは望めない。そのため、軌道系交通機関の顧問・運営や技術開発、車庫隣接地の土地開発に力を入れていきたいと考えている」(高雄メトロ担当者)という。

休日には多くの人でにぎわう高雄LRTの停留所。写真を撮る人も多い(筆者撮影)

高雄市はバイクの交通分担率がとても高い。これは維持費の安さに加えて、広々として走りやすい道路環境、道路の路肩や建物の道路に面した半屋外スペース「騎楼」がバイクの停車空間を作っていることが後押しする。環境面に関しても最近は電動バイクがまちのあちこちで走るようになってきた。

また、MRTやLRTのカバー範囲は決して広くない。結局、MRTやLRTの駅までのアクセスおよび駅から目的地までのアクセスは徒歩やバス・シェアサイクルの利用となり、バイク利用に比べると抵抗感がある。そのため、MRTの利用者は高速鉄道の接続駅となっている左営駅や六合夜市やアリーナ、ショッピングモールのある巨蛋(アリーナ)駅といった一部の駅を除いて伸び悩んでいるのが現状である。

新路線の計画も

こうした厳しい状況にありながらも、以前「台湾に登場、公共交通『定額乗り放題』の衝撃」で取り上げたように、MRTからバスやシェアサイクルの乗り継ぎをスムーズにするためのさまざまな工夫や鉄道・バス・タクシー乗り放題パスの販売を行うことで、公共交通利用促進を図っている。

そして、今後さらに高雄市のMRT・LRTは拡大する予定だ。まず、MRTは新路線の黄線が計画されている。市街地から北東へ向かう路線で、23駅を設置する計画だ。

LRTは、第2期として残りの区間が中国鋼鉄とフランスの鉄道メーカー・アルストムの手で建設されている。この区間が完成すれば、LRTの環状運転が可能となる。環状路線になり、22.1kmと長距離のLRT路線が誕生することになる。

厳しい状況におかれながらもさまざまな工夫や魅力の創出を行っている高雄市のMRT・LRTと運営法人の高雄メトロ。高雄メトロは鉄道の顧問・運営では台湾の各地に勢力を広げる可能性もある。

高雄市のMRT・LRTが今後の発展でどんな都市交通の姿を見せるか。期待したい。

鳴海 侑 まち探訪家

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なるみ ゆう / Yu Narumi

1990年、神奈川県生まれ。大学卒業後は交通事業者やコンサルタントの勤務等を経て現職。「特徴のないまちはない」をモットーに、全国各地の「まち」を巡る。これまで全国650以上の市町村を訪問済み。「まち」をキーワードに、ライティングをはじめとしたさまざまな活動を行っている。最新の活動についてはホームページ(https://www.naru.me/)やX(旧・Twitter、https://twitter.com/mistp0uffer)で配信中。

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