バイクの街、台湾・高雄で鉄道利用は広がるか MRTやLRTが続々と開業、新路線の計画も

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この架線レスのシステムは、なぜ導入されたのだろうか。LRTを運営することになった高雄メトロの関係者によると、「1つには台風の問題がある。高雄には年に何度か台風が接近・上陸するが、秒速40mの猛烈な風が吹く。そのため、架線が切れてしまう恐れがある。もう1つは景観の問題で、架線がなければ綺麗な景色を作ることができる」という。

LRTの建設は2013年6月に始まり、2014年には高雄メトロと運営に関する契約を行った。そして2015年からは一部で試運転を開始、2017年9月に第1期区間のLRTが完成、2017年11月に正式開業した。

現在運行されている第1期区間のLRTは、籬仔内停留所から旧高雄港駅近くの哈瑪星停留所まで8.7km、ほぼすべての区間が専用軌道だ。前鎮之星停留所と哈瑪星停留所の2カ所でMRTと連絡する。営業時間は7〜22時で運行は約15分間隔。最高速度は時速50kmとなっている。運賃収受は停留所でICカードをタッチするか乗車券を購入する、いわゆる信用乗車方式になっている。

他市のLRTも運営

LRTの沿線にはショッピングモールの「ドリームモール」やコンベンションセンターの「高雄展覧館」、倉庫街をアートで彩った「駁二芸術特区」などがあるため、休日の利用者が多い。高雄メトロの担当者に利用状況を尋ねると「平均すると平日は1日約4000人、休日は1日約1万人の利用がある」という。実際、4月頭に現地の連休に合わせて訪ねた際は多くの人がLRTに注目し、停留所でも多くの利用者が電車を待つ様子が見られた。この区間のLRT事業はうまくいっているといっていいだろう。

そして高雄メトロは高雄LRTを運営した実績を基に、台湾最大の都市、台北市に隣接する新北市を走る「淡海LRT」の運営も2018年1月から行うようになった。

新北市内の淡海ニュータウン内を走る淡海LRT。大きな交差点では架線レスでバッテリーを利用して走行する(筆者撮影)

淡海LRTは2014年11月に建設を開始、2018年12月に試運転を開始し、2019年2月に正式開業した。起点は新北市にある台北MRTの紅樹林駅に隣接する高架駅で、省道(日本の国道クラスの道路)の上を高架で走り、淡海ニュータウンへ至る。ニュータウンの中は道路に挟まれた専用軌道を走る。終点はニュータウンの端で、周囲には何もない場所だ。まさにニュータウン開発のために敷かれた鉄道で、高雄LRTとは沿線環境が異なる。

一方で似ているところも多い。約15分間隔での運行や架線レス技術、信用乗車制度の導入だ。高雄メトロはこの淡海LRT以外にも桃園市のLRT計画の顧問も行っており、こうした業務を増やしていく予定だ。

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