ベントレー、乗って触れてわかったスゴい実力 運転していても後席に乗っても気持ちいい

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エアサスペンションシステムは連続可変式ダンピングコントロールを備えており、ふわりふわりと、いわゆるバネ上重量の重さによる重厚な乗り心地がうまく作られているのにも感心する。

後席もまたいい場所だ。ややソフトなぐらいクッションがたっぷり入った座面と、肌触りのいいやわらかな感触のレザーで包まれたシートに身をまかせていることを嫌だと思うひとはいないだろう。

前席シートの背後には折りたたみ式のテーブルも備わるなど、戦前からの伝統が守られている。ウッドパネルの種類は、クルミ材、サクラ材、オーク材など、13種類だそうだ。ぶ厚いクッションも戦前のぜいたくな仕様を思わせて好ましい。

カーボンファイバーの構造のためドア開口部を大きくとっても剛性は確保されている(写真:LEON編集部提供)

オプションでさまざまな仕様が選べるのも魅力のひとつだ。ただし日本では、外板色を含めて思うぞんぶん自分の好みをオーダーするひとはかなり少ないとか。

海外だとよく聞く話だが、パートナーの肌の色にあった内装色とか、好きなネイルや宝石の色を反映した外板色を選ぶとか。リセールバリューを考えない。それこそ究極のぜいたくだ。

クルマとして完成されているミュルザンヌ

ミュルザンヌが不得意とするのはコネクティビティや運転支援技術だ。登場が2010年だからアーキテクチャー(先進的装備を搭載できる土台)が前の世代となってしまうせいで、装備が限定的である。

それでも2016年からは、タッチスクリーン式インフォテイメントプラットフォームを使った新インフォテイメントシステムが搭載されている。スクリーンを押した際には、反発力により操作感が得られる。あえて古典的にデザインされたアナログメーターの世界観を重視しながら、各所に最新のテクノロジーが採用されているのだ。

でもこのクルマに乗るひとは、コネクティビティをあまり意識していない、とも聞く。マイナーチェンジごとに新しい装備が増えていくことになるだろうが、クルマとしては完成形だ。引くものも足すものも、あまりないという印象である。

CO2排出量などを考えると、V6気筒などダウンサイジングと、ハイブリッドシステムが必要になってくるだろう。それはそれで必要なのだけれど、デカいV8エンジンで重量級の車体を動かすキャラクターとは離れがたい。

乗ってみるとぜったいに病みつきになるクルマだ。運転手に見られてしまうかどうか。ファッションなどでカバーすれば、大丈夫だろう。ベントレーとの生活は旬の楽しみである。

(文:小川 フミオ)

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