プリンスホテルがいま「会員制」に進出するワケ ユーザーとホテル、双方のメリットとは?

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なお、今回バケーション クラブの事業を進めるうえで、「東急ハーヴェストクラブ」を展開する東急不動産と、施設の相互利用や会員権の販売で提携した。とくに鉄道事業でライバル関係にあると世間一般で思われている両陣営が手を結ぶのを意外に感じる向きもあろう。

この点について荒原氏は、「2万5000人の会員と、全国にすでに多数の施設を持つ東急不動産と、SEIBU PRINCE CLUBに98万人の会員を持ち、MICE(会議・研修)事業を通じて法人の顧客ネットワークを持つプリンスホテルの連携は相互にメリットがある」とする。

本当に富裕層狙いなのか?

こうして見ると有望に思われる会員制ホテル事業だが、軽井沢を訪れて疑問に感じたこともある。まず、ホテルタイプはヴィラタイプと比べると安く利用できる反面、30㎡の2~3人利用の部屋がほとんどであり、60㎡~のファミリータイプの部屋は4室しかない。しかも、ファミリータイプでも最大4人での利用となる。

これは、3世代での利用を望む、市場における富裕層のニーズに合致していないのではないか。

富裕層をターゲットとしているのか、比較的若手のファミリーを狙っているのか、販売戦略にブレが生じているようにも思えるが、「潜在的な富裕層の開拓も行っているという意識だ。バケーション クラブは事業としてまだ始まったばかりであり、今後も多様な可能性を検討していきたい」と、荒原氏は説明する。

なお、プリンスホテルは、同じ軽井沢エリアでザ・プリンス ヴィラという高級メゾネットホテルを展開している。利用料金はかなり高額だが、長期滞在を含めて稼働率はかなり高いという。今後は会員制ホテル事業においても、これに近いマーケットを狙っていくのも、ありなのではないか。

森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

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