男性保育士が直面する現場の何とも厳しい現実

安心して預けられる環境づくりも必要だ

なぜ資格を持ちながら、保育士として働かない人がこれほどまでに多いのか。潜在保育士が多い原因の1つとして賃金の低さがある。実際に、厚生労働省が発表した『平成30年賃金構造基本統計調査』を見てみると、全産業の月間現金給与額が33万6700円なのに対し、保育士の月間現金給与額は23万9300円と約10万円も低い。

野村総合研究所が昨年発表した推計によれば、条件が合えばすぐにでも保育士として働きたいと思っている潜在保育士は5.6万人おり、実際にこれらの潜在保育士の就労が実現すれば、新たに16.9万人の子どもの保育の受け皿が誕生するというだけに、非常にもったいない現状がある。

しかし、同調査のなかに興味深いデータが存在している。就労意欲の高い潜在保育士に保育士として働くうえで重視することを聞いたところ、全体の64.9%が「金銭的報酬が高いこと」以外の項目を最も重視すると回答したという。

そのように回答した潜在保育士のうち54.2%が「柔軟な働き方」を重視し、36.7%が「職場での人間関係」を挙げたという。この結果に基づけば、ただ保育士の給与を引き上げるだけでは保育士不足は解消されないことがわかる。

男性保育士が直面している現状

保育士不足の背景にはさまざまな原因があり、解消策も多岐にわたる。その1つにもっと男性保育士を活用せよという声がある。確かに、男性保育士の数は非常に少ない。筆者もすでに3園以上の保育園を利用させてもらったが、男性の保育士を見たことはほとんどない。

実際にデータを見てみると、想像以上に男性保育士が少ないことがわかる。男女の人数比較が可能な厚生労働省の『平成30年賃金構造基本統計調査』によれば、女性保育士が21万6220人に対し、男性保育士は1万3400人と、全体のわずか5.8%だ。5年前の9470人(全体の4.12%)から大きく増えていない。

その背景を現役の男性保育士に聞いてみると、彼らが直面しているさまざまな問題が見えてきた。

河西景翔氏は1995年から保育の現場に入り、2002年から保育士として働いているベテランの現役男性保育士だ。「なぜ、男性保育士は数が少ないのか」と聞くと、「そもそも保育園自体がいまだに女性の職場としての作りになっているところが多い」と言う。過去に勤務した保育園では男性保育士用の更衣室はなく、トイレで着替えることもあったという。

男性保育士が少ないことが、男性保育士の参加をさらに困難にさせているとも指摘する。保護者が男性保育士を見慣れていないことから、自分の子どもの担任が男性保育士だとさまざまなクレームが発生するのだという。

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