トヨタが中国で「新興EVメーカー」と組んだ事情 「C-HR」のEVを世界に先駆け、中国に投入へ

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ただ、欧米ライバルの背中はまだまだ遠い。昨年、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は421万台、アメリカのゼネラル・モーターズ(GM)は364万台を販売した。少しでも欧米勢との差を縮めるために、トヨタは電動化を急ぐ必要がある。

中国政府は今年からEVなど新エネルギー車(NEV)の生産を自動車メーカーに義務付ける「NEV規制」をスタートした。年間3万台以上を販売する自動車メーカーが対象で、総生産台数に対して、2019年は10%、2020年は12%のNEV生産を義務づけている。自社で規制を達成できない場合、エンジン車などの生産が制限される。他社から枠(クレジット)を購入することは可能だが、いずれにしろ大手メーカーは対応を迫られる。

NEVの対象はEV、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド(PHV)で、トヨタが得意とするHVは含まれない。トヨタは2018年に合弁相手の広州汽車ブランドでEVの「ix4」を、今年3月にはカローラやレビンのPHVを発売した。ただ、それだけでは足りない。C-HRとIZOAのEVを中国で先行投入するのはこのNEV規制への対応のためだ。

ローカルEVメーカー・奇点汽車と提携

上海でトヨタはもう1つ新たな戦略を打ち出した。それがローカルの新興EVメーカー、奇点(きてん)汽車との提携だ。トヨタが奇点汽車に電動化技術を販売し、奇点汽車がEVの生産によって生み出したクレジットの余剰分を優先的に購入する契約を結んだ。

奇点汽車は、IT企業の創業経験が豊富な沈海寅(シェン・ハイイン)氏が2014年に設立したEVのスタートアップ企業だ。現在の社員数は約700名。AI(人工知能)やIoT技術を活用した車両を開発している。トヨタはかつて自社で開発し限定発売したEV「eQ」の設計利用ライセンスを奇点汽車に販売する。

奇点汽車がトヨタの「eQ」をベースに開発する新型車のコンセプトカー(記者撮影)

奇点汽車は2021年にeQをベースにした新型車「iC3」を発売を計画。満充電時の航続距離は300kmで、都市部での近距離利用やカーシェアの市場を狙う。奇点汽車は、初の自社開発EVとしてSUV「iS6」(航続距離400km)の量産開始を2019年中に計画しており、ラインナップを広げていくためにトヨタの力を借りる。

一見、トヨタがベンチャーに技術支援するという一方通行の話に思えるが、それだけで終わらない。トヨタも奇点汽車のIT技術を取り入れる。

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