金持ちどんどん増えるサンフランシスコの実態 新興企業IPO続で、1晩で富豪が約1万人増える

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ジェイ・シーガンはライブハウスの元オーナーで、今は個人のイベント向けにパフォーマーや音楽家を選び、手配するビジネスを手がけている。これまでもウーバーやエアビーアンドビー、スラック、ポストメイツやリフトをはじめとするIPO予定企業のイベントを請け負ってきたが、今は仕事の増加に備えている。

「IPOの手続きを進めている企業や関係者のために、1件のIPOにつき複数のパーティーが開かれる」とシーガンは言う。こうしたパーティーの予算は1000万ドルを軽く超えることもある。「彼らは一流のセレブを呼んで、重役のディナーテーブルの前でパフォーマンスをさせたがる。バレエのパフォーマーも人気だ」。

ハイテク企業に対する反感も再燃

最近では、テーマを決めて複数のバンドを呼ぶといったコンサートのプロデュースを自分でやりたがるクライアントも増えている。最近手がけたイベントでは、1980年代が好きなテクノロジー企業の重役のためにバングルズやティアーズ・フォー・フィアーズなどを呼んだという。

そしてもちろん、テクノロジー企業に対する反感も再び頭をもたげようとしている。

先ごろミッション地区にあるラジオ・ハバナ・ソーシャル・クラブでは、住宅の権利擁護活動家の集会が開かれた。これまでのところ、活動はありがちな流れで進んでいる。少数の人々の懐に大金が流れ込み、株を持たない大衆が結集し始める。今後は立ち退きに抗議し、開発業者と戦い、税制上の優遇措置に反対する運動を組織し、テクノロジー企業の通勤バスの前で横断幕を広げたりするのだろう。

富豪の増加で「多くの人が立ち退きを迫られることになるだろう」と、サンフランシスコ住宅権利委員会のサラ・シャバーンジマー専務理事は言う。一息置いて彼女はこう言った。「また同じことの繰り返しという感じだ」。

活動家たちは、豆のディップとチーズの皿が並んだテーブルの周りにひしめき合った。

「私たちは以前のバブル期も経験している」と、同委員会の幹部であるマリア・ザムディオは言った。「教訓も学んだ。大量の金が流入するとどうなるかはわかっている。過去には譲歩したが、今年はそのつもりはない」。

(執筆:Nellie Bowles記者、翻訳:村井裕美)
(c) 2019 New York Times News Service

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