住宅ローン「早く返すほどベスト」という勘違い 総額で得しても家計の資金繰りはきつくなる
毎月の返済額は35年ローンが約11.8万円に対し、20年ローンは約18.7万円とかなり多いが短期間でなおかつ低金利で返済することになるため、35年ローンと比べて返済総額で400万円も得をする(毎月の返済額は住宅ローン減税を考慮せず)。損得で考えれば圧倒的に20年ローンが有利であることは間違いない。
しかし「資金繰り」、つまり手元資金の推移で考えるとまったく異なる数字が見えてくる。
2つのローンの返済額
20年ローンと35年ローン、2つのローンの差額は月額で約7万円、1年間では約84万円となる。つまり35年ローンは20年ローンと比べて年間80万円以上も支払額が少なく、その分だけ手元に多くのお金が残せる。
住宅購入のタイミングは、結婚して子どもが生まれてから小学校に入学する前までが特に多い。購入から10年後、つまり子どもが大きくなって中学校に入学する前後の頃には20年ローンと35年ローンの支払総額の差は、住宅ローン減税を考慮すると約885万円となる。つまり35年ローンのほうが手元に残るお金が約885万円も多い。
高校を卒業して大学進学のタイミングと重なる15年後で考えれば差額は約1304万円とさらに広がる。この金額は2人の子どもを手持ちの資金だけで大学に進学させられるか、奨学金を借りるか、というほど大きな差だ。
そして20年後、20年ローンは当然ながら完済して約4207万円を支払っている。一方、35年ローンはまだ約2484万円しか払っていない。この時点で35年ローンは20年ローンより手元資金が約1722万円も多い。グラフにしてみると一目瞭然だ。
累計支払総額の推移をグラフで見て、双方とも完済した時点の支払総額を比較すると、前述のとおり20年ローンのほうが400万円ほどお得だ。しかし、途中経過を見ると支払額には大きな差が生じている。返済開始当初は、20年ローンの支払い総額のほうが35年ローンのそれと比べて突出して多い。
グラフにしてみたときには「なんだかおかしい」と感じる人も少なくないかもしれない。「返済総額が少ない20年ローンのほうが支払い額が多い……?と混乱してしまうかもしれない。これが資金繰りを考える際に最も重要な点だ。
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