住宅ローン「早く返すほどベスト」という勘違い 総額で得しても家計の資金繰りはきつくなる

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

もちろん想定以上にお金が余り、子どもが独立して教育費の負担が終わり、それでもなお何千万円も貯金が残っていて使い道もない……。そんな状況ならば繰り上げ返済でローンの支払いを終えてしまってもいいだろう。

しかし、子どもがまだ小さく貯金はそれほどたまっていない、進学先も確定しておらず教育費の負担が重い大学進学時の費用がどれくらいかわからない、収入についてもどこまで勤務先が安定しているか不透明……そんな状況ならば資金繰りを優先して手元にお金を残したほうが無難なのだ。

短期でローンを組むことは実はリスクを高める

少なくとも家を買う時点ではほとんどの人にとって、将来の状況は不確定だ。短期でローンを組むことは実はリスクを高めることでしかない。そして一度ローンを組むと後から返済期間を延ばすことは簡単ではない。35年ローンはゆとりがあって貯金があると無駄遣いをしてしまいそう、という人もいると思うが、それは単純に将来の教育費などを把握していないだけだ。

どうしても無駄遣いをしてしまいそうだという人はどうしたらいいか。例えば、今回比較した20年ローンと35年ローンの差額である約7万円を将来の繰り上げ返済や教育費のために毎月預金にして一切触らないでおく、といった方法でもいい。とにかく資金繰りは最優先すべきと伝えておきたい。繰り返すが家計が破たんするのは支払いが止まったときだ。

結果的に資金繰りに問題は発生せず、手元に多額の資金が残ったとする。やっぱりあんなFPの言うことなんて無視をして短期間のローンを組めばよかった……と、後悔するような状況になったらどうすればよいか。そのときに繰り上げ返済を考えても遅くはない。繰上げ返済の効果はできるだけ早く行ったほうが高いことは間違いないが、10年後、20年後でも十分効果はある。

何年のローンが最適か、繰上げ返済はいつを行えばいいか、どちらも個別の事情によって変わる。ただし、1つだけ言えることは「資金繰りの観点を入れるだけで住宅ローンに関する判断は大きく変わる」ということだ。

中嶋 よしふみ FP、シェアーズカフェ・オンライン編集長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

なかじま よしふみ / Yoshihumi Nakajima

1979年生まれ。2011年にファイナンシャルプランナー(FP)のお店・シェアーズカフェを開業。翌年に開設した「シェアーズカフェのブログ」は5カ月で月間アクセス14万件を突破。現在は、各種士業や大学教授など、多数の専門家が書き手として参加するウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインを編集長として運営。日経DUAL、アゴラ、Yahoo!ニュース個人、ハフポスト等で執筆中。その他多数の媒体で情報発信を行う。対面では新婚カップルやファミリー世帯向けにプライベートレッスン・セミナー・相談等のサービスを提供、とくに住宅購入のアドバイスを得意とする。生命保険の販売や住宅ローンの仲介等を一切行わず、FP本来のスタイルで営業中。お金よりも料理が好きなFP。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事