「テスラ進出」に身構える中国メーカーの思惑 規制緩和でEVシフト加速、競争激化は必至

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「中国のテスラ」になぞらえる小鵬汽車(アリババ、ホンハイなど出資)が2018年12月に発売した初の量産モデル「G3」(航続距離350km)の販売価格は、「モデルS」の4分の1程度(約350万円)にまで抑えている。「G3」は25個のスマートセンサーを搭載している。ルーフの上に360度撮影できるカメラを設置し、自動車周辺の画像を車内モニターでウォッチできる。外観は「モデルS」に似ており、宇宙船のようなコックピットには大型タッチパネルが並ぶ。

現在小鵬汽車では、元テスラのAutopilotチームのエンジニア谷俊麗氏、元クアルコムの自動運転開発責任者の呉新宇氏をはじめ、アメリカのシリコンバレーからスカウトされた中国人技術者らが同社のスマートカー開発を担っている。

テスラが自動運転システムの不正盗用問題をめぐって最近提訴した元テスラの中国人エンジニア曹光植氏も、現在小鵬汽車に移り自動運転視覚システムの専門家として中核的な存在となっている。その結果同社EVの電池構造、内装、中央制御、コックピットなどは少なからずテスラのEVに類似している。

ライセンス制度導入で工場建設中止も

中国政府は2016年3月、EVメーカーの乱立を抑制するためにライセンス制度を導入した。今年1月適用を開始した「自動車産業投資管理規定」では、ライセンスの発行条件を「直近2年間のEV乗用車販売台数3万台超、売上高30億元超(約50億円)」とした。同政策の発表により、ライセンス獲得のメドが立った一部の新興EVメーカーには一筋の光明が差したといえよう。

また、テスラが上海でEV工場の建設に着手したことにより、NIOは今年1月、上海工場の建設中止を発表した。なぜなら、同一地域においては先行する企業のEV工場が稼動するまでほかの企業のEV工場建設を禁じる規定があるからだ。NIOの2018年の最終損益が営業費や研究開発費の増加により1600億円の赤字になったことも同工場の建設計画が白紙に戻った一因であろう。

一方、新興EVメーカーの多くはEVを量産できないままであり、こうしたメーカーにとっては厳しい状況が続き、部品サプライチェーンの整備やものづくり能力の向上といった課題が残る。

脱エンジン車の方向に進む中国の自動車市場で、外資系を含む自動車メーカーがこぞってEV市場に参入することになれば、この先競争は一層激しさを増し、新興EVメーカーの淘汰は加速するものと思われる。今後どのようにしてライバル自動車メーカーに伍して高品質のスマートカーを開発し、また量産体制を構築していくか、中国新興EVメーカーの真価が問われている。

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