「テスラ進出」に身構える中国メーカーの思惑 規制緩和でEVシフト加速、競争激化は必至

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一方で、テスラのEV現地生産が地場自動車メーカーの競争力低下を助長するのではないか、と懸念する声がある。仮に「モデル 3」の販売価格が500万円台に収まれば、地場ブランドの中高級EVや欧米系プラグインハイブリッド車と十分競い合える価格水準となる。

テスラがそのブランド力と技術力でガソリン車を中心とする中国自動車市場に風穴を開ければ、地場自動車メーカーに危機感が広がり、中国のEVシフトは一段と加速するものと予想される。

2014年5月、習近平国家主席は「新エネルギー車シフトが中国自動車強国への唯一の道だ」と宣言し、中国政府は国策としてNEV産業の発展を推進し始めた。こうして中国ではNEVシフトという巨大なうねりが巻き起こり、多くのIT企業が「100年に一度」のビジネスチャンスをつかむため、我先にとスマートカー事業に参入することとなった。

EV開発に乗り出す異業種企業

来るべき自動車の未来を予感した中国大手IT企業が相次いで新興EVメーカーを「青田買い」するのを見て、市場のトレンドを察知した異業種の企業もEV開発に乗り出した。2014年から2018年までの5年間に誕生した新興EVメーカーは、一気に50社を超えた。

2014年11月、上海で設立した蔚来汽車(NIO)はテンセントなどの出資者が持つネットや人工知能の技術を結集して高級スマートカーの開発を急ぐ。24時間出張充電サービスや高速道路での電池交換により既存の自動車販売との差別化を図ろうとしている。

さらに、自動車購入の初期コストを抑えるEV電池の分割払い制や、電池の劣化に対応する電池グレードアップサービスを導入し、消費者ニーズへの対応に工夫を凝らす。

NIOは2018年6月、アルミ製ボディーの高級EV「ES8」(航続距離500km)を発売。「モデルX」に比べて遜色のない短時間充電やセンスのよい内装に加え、「モデルX」の半額という割安な価格を武器に中国高級EV市場でシェア拡大を図っている。

2018年の「ES8」の販売台数は1万1348台となり、中国ではすでに「モデルX」の販売台数(9413台)を超えた。また、テスラ「モデル3」に対抗する量産車種第2号、「ES6」(販売価格約600万円)を2019年6月に投入する予定だ。

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